河井夫妻「買収」意のままに “不正菌”に感染した議員達

NEWSポストセブン / 2020年7月4日 7時5分

「現金配布リスト」には100人以上の名前があったという(写真/共同通信社)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、昨年の参院選広島選挙区を巡り発覚した、河井克行前法務大臣と妻の案里参議院議員の大規模な選挙法違反事件について。

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 首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染者が再びじわじわと増えている中、広島では2019年の参院選で猛威をふるった別の”菌”による感染被害が深刻だ。その名も“不正菌”である。

 その感染力はなかなかのものらしい。行動経済学者のダン・アリエリーは、著書『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』(早川書房)の第8章「感染症としての不正行為―不正菌に感染するしくみ」でそう書いている。今回広島で広がった不正菌は、選挙法違反である「買収」の形となって発生した。感染元である河井克行容疑者と案里容疑者によってお金がばらまかれ、異例の規模で拡大した。

 広島県議や市議など、地元議員や後援会関係者らが次々とこれに感染。陽性と判明した首長3人が辞意を表明するなど、広島では「辞任ドミノ」が続いている。といっても、彼らは被害者ではない。感染しているかどうか検査を受けなければ判断できないコロナと違い、この菌は事前に感染するかどうかを自分で選べる。

 そもそも選挙を行って議員になった人達だから、この菌が危険であることは熟知していたはず。感染すれば「アウト」だと分かっていながら、お金を受け取った。克行容疑者のパソコンで管理されていた現金配布リストには100人以上の名前があったという。ダンは著書で、「身近な人の不正を目撃することで不正菌は感染性が高くなる」と述べているが、これだけの人数だ。直接見ていなくても、噂話が聞こえてこないはずがない。

 それ以上に怖いのは、感染を本人も仲間内も軽症だと思っていたことだ。なかなか辞任しなかった市長らがいい例だろう。「わたくしごとで申し訳ありません」と謝罪した三原市の天満祥典元市長は6月23日、陽性と分かっていながら「現金の授受はございません」と議会で明言。丸刈りで謝罪した安芸高田市の児玉浩元市長も、当初は頑として否定。河井夫妻が逮捕された後でも公の場で否定できてしまうのだから、よほど軽くみていたのだろう。

 結局、市民や後援会の声によって2人とも辞任したものの、初めは陽性疑惑を否定し市長を続投できると踏んでいたのだから、不正菌が重症化すると倫理観や道徳観が損なわれ、完治するのは難しいらしい。いや、とっくに抗体ができていて、感染したのはそれより前ということもありえるかもしれない。

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