夜間中学が抱える問題、前川氏と「セーラー服の歌人」の見解

NEWSポストセブン / 2020年8月4日 16時5分

「セーラー服の歌人」と呼ばれる鳥居さん

 さまざまな理由から中学校に通えなかった人を受け入れて授業を行う「夜間中学」。生徒たちの国籍や年齢層は、幅広い。外国人もいれば、高齢者もいる。

 そんな夜間中学は、不登校などで実質的には教育を受けていないものの、中学の卒業証書を授与された「形式卒業者」の入学が認められていなかった。歌集『キリンの子』で注目され、「セーラー服の歌人」と呼ばれる鳥居さんも形式卒業の壁に苦しんだひとり。幼い頃に両親が離婚し、引き取った母も死去して養護施設で育った鳥居さんは、いじめや虐待を受けて小学校の途中から不登校になった。

 すべての人に教育の権利が認められるよう、鳥居さんや支援者が活動した結果、2015年に文科省は形式卒業者に夜間中学の入学を認める通達を出した。

 一方で別の課題も生じている。形式卒業者を拒むうちに外国人の生徒が増え、鳥居さんのような学び直しを求める生徒と現実の授業に乖離が生じるようになったのだ。鳥居さんはこう語る。

「私の通っている夜間中学では小1の勉強をしたい人、中3の勉強をしたい人、日常的な日本語を教えてほしいという人が同じ教室にいる訳です。クラス分けも勉強の程度で振り分けるのではなく、日本語がしゃべれるかどうかで分ける感じで、私のクラスでは『寿司』や『柔道』の発音の練習があって戸惑いました。

 私の将来の夢は、教員免許を取って勉強の楽しさを生徒に伝える先生になることです。いまの中学校では高校や大学入試に必要な授業は受けられません。しかし身寄りのない私にとって塾や家庭教師は高額で困っています。外国籍の生徒や、先生たちのやり方を否定したいのではないのですが、制度の方に問題があると思っています。私は日本語を学びに行ったのではないため、夜間中学は休学することにしました」(鳥居さん)

 元文部科学事務次官の前川喜平さんも同様の課題を指摘する。

「文科省の調査では、入学目的の3割近くが『日本語を学ぶ』である一方、形式卒業者や不登校経験者の多くは日本語の読み書きに問題はなく、高校受験をめざす人も多い。生徒の幅広いニーズに対応するには、無償の日本語学校や、都道府県レベルで広域に対応する夜間中学の整備といった対策が必要です」(前川さん)

 東京・葛飾区の双葉中学校夜間学級のように、東京では日本語学級を作るなど対応が行き届いているところもあるが、それ以外のほとんどの地域では課題を抱えている。

 解決法の1つは、自治体ではなくボランティアが運営する自主夜間中学による支援だ。前川さんも現在、2か所の自主夜間中学で勉強を教えている。

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