競馬新聞 ひとつだけ◎がつく「ポツンと二重丸」の誘惑

NEWSポストセブン / 2020年9月6日 7時5分

時々ある「1人だけ本命」をどう読み解くべきか

 誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、競馬新聞の予想にある本命「◎」が、ポツンと存在している時の魅力について考察する。

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 ネット投票を長く強いられると珍談も生まれる。服装に気を使わずに済むから、剣道四段の友人Aは独自の勝負服でパソコンに臨む。剣道のメンの着用である(アホか!)。レース毎に「キエーッ!」と奇声があがる。Tシャツにトランクスでメンだけをかぶる様は異常で、呆れ果てたカミさんは夕方までショッピングモールに避難するという。竹刀を振り回さないだけマシだが、今後も同じ状況が続くとどうなるかは分からない。

 でもまあ、気合は必要だ。自分の◎(本命)を決める。◎は気合の印なのだった。

 予想紙の印でも、まずは◎に目が行く。◎が連なる人気馬も注目だが、ひとつだけ◎が付いている「ポツン二重丸」に気合が漲ってみえる。予習段階でポツンを見つけたら気にとめておき、パドック・返し馬を見て「ほう」と思えばヒモに絡めたりする。孤高の二重丸とも言うらしいが、ポツンの語感がいい。

 このポツン、散見するように思えるが、そうは出てこない。専門誌編集者の友人によればその定義は「◎のほかに△や▲が1つでも付いていたらダメ」。厳しい認定基準なのだ。

 ある日曜競馬、3歳以上1勝クラス、ダート1200メートル。ポツンを見つけた。なぜか「おっ!」と声が出てしまう。

 6歳牝、13番人気(15頭)、単勝オッズ67.6倍。一言コメントは「前崩条件」である。この日の全24R中、唯一のポツン二重丸。もう一紙を見てみると無印だった。かなりのポツン度である。

 前走、前々走のレースぶりは芳しくない。3年前に勝ったきり低迷が続いている。不良馬場だし、他に先行力のある馬が複数いる。静観妥当だろう。

 しかし。×を付ける手が止まる。孤高の◎が私を見つめている。もしこのポツンが来たらどうすんだ。ヒジョーに後悔するだろう。ポツンの誘惑である。パドックも返し馬もまずまずだったし。

 そこで複勝に乗ったのだが。無難に出て後位追走、直線で頑張ったものの7着。先行した3頭ですんなり決まった。頭を冷やせば、先行力に欠ける人気薄が不良馬場でどうか。トラックマンがポツンを打った時点では馬場状態不明なのである。でもこの6歳牝、ガチっと記憶に残す。良馬場で好走するかもしれない。

 ポツンがスカだった場合、すんなり納得してしまう。前回に触れた「◎の鈴なり」がスカを食らうこともあるだろうし。

 さて、◎がばらついている場合、誰かしら的中しているはずでは。いや、完全スカも当然ある。完全スカ率とは? 意地の悪い試みではあるが、思いついたらやらずにいられないのだった。

●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。

※週刊ポスト2020年9月11日号

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