巨人の名将2人のトレード哲学 飼い殺しの川上、気配りの原

NEWSポストセブン / 2020年9月19日 16時5分

原監督流の「トレード」活用方法とは(時事通信フォト)

 監督14年目にして川上哲治氏の持つ通算勝利数1066勝を抜き、巨人歴代1位となった原辰徳監督。不滅の「V9」を成し遂げ、“ドン”とまで畏れられた川上監督と原監督は似ているのか。川上、原両監督とも積極的なトレードで戦力を補強する点は共通するが、トレードの「哲学」は異なるようだ。

 V9前半の巨人投手陣を「エースのジョー」として支え、通算141勝を挙げた城之内邦雄氏(80)が言う。

「川上さんはONの後を打つ5番に広島から森永勝也さん、西鉄から高倉照幸さん、大洋から桑田武さんなどベテラン主砲を次々と獲得し、1~2年で使えなくなると、他球団の戦力になることを防ぐため飼い殺しにしていました。僕自身、勝てなくなると若手と競争をさせられ、それが実らず他球団への移籍を希望しました。しかしトレードのできる戦力外通告ではなく任意引退選手となり31歳で半ば強制的に引退させられた。

 一方の原監督は、高梨(雄平)やウィーラーなど他球団で戦力外になっている選手を引き入れ活躍させている。ドラフト1位で獲った沢村(拓一)を『他球団でもうひと花咲かせろ』とロッテに送り出した気配りは、川上監督には全くなかった」

 原監督は定石に縛られないと城之内氏が続ける。

「右投手には左打者、左投手には右打者のセオリーに則りつつ、格上の選手に代えて格下の選手を送ったり、時にはセオリーを無視して大胆な選手起用をして、それが当たる。いろんな選手を起用してうまくいくのは、普段からその選手を観察しているからでしょう」

 実際、川上政権で堀内恒夫(148勝)、城之内邦雄(141勝)、高橋一三(104勝)と3人いた100勝以上の投手は、原政権では内海哲也(113勝)のみ。

 半面、川上政権で白星を挙げた投手は44人だが、原政権では97人にのぼる。

「原監督は高梨、中川晧太、デラロサといったメンツを変幻自在に組み合わせる。先発完投で柱となるピッチャーが踏ん張った川上さんの時代とは大きく異なる」(同前)

 V7達成時に投手として新人王を獲得した関本四十四(しとし)氏(71)は、「チームの風通しをよくしたことが原監督の功績」と指摘する。

「V9時代はONという偉大なスーパースターがいて、そのONを使いこなした川上監督の手腕は流石だった。ONがいない原監督は、『一軍と二軍はすべて戦力』との考えを持ち、二軍から上がってきた選手を積極的に起用して若手を発奮させている。若い選手を起用すればチームは活性化するし、監督に不満を持つ選手はいなくなるでしょう。ONのようなスーパースターの不在を逆手に取って、うまくチームをまとめています」

 原巨人の強みは大型補強ではなく、個々の選手の能力を引き出す采配との意見は、多くの巨人OBから聞かれた。

※週刊ポスト2020年10月2日号

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