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打撃投手にイップスあり 投球動作で出す足が分からなくなる

NEWSポストセブン / 2012年12月17日 7時0分

 ユニフォームを着た投手だが「選手」ではない。支配下登録はされておらず、背番号は3桁。仕事は「打者に打たれること」――。

 グラウンドで最も輝くマウンド近くにいながら、どこか哀愁漂う存在、それが「打撃投手」である。しかしその仕事は、チームの浮沈を左右するほどの重要なものであることは、あまり知られていない。

 普通、打撃投手は打ちやすい球を投げるため、少し力を抜いて投げる。簡単そうに思えるが、実はこれが打撃投手にとって、最も難しいのだという。ノンフィクション作家の澤宮優氏が語る。

「緩いとストライクが入らないんです。皆、思い切り投げる方が楽だといいますね。たまにキャンプなどで、一軍の投手が打撃投手を務めることがありますが、大抵失敗している。加減しなければと思えば思うほど、手元が狂うのです」

 史上最多3回の三冠王に輝いた落合博満は、打撃練習で特に遅い、山なりの緩いボールを要求することで知られていた。遅い球をじっくり引きつけてミートすることで、自分のフォームを固めていくという調整法だった。

 だが、これは打撃投手泣かせでもあった。実際、落合により引退に追い込まれた打撃投手もいる。理由は「イップス」だった。

 イップスとは、精神的な原因によりスポーツの動作に支障を来し、本来の動きができなくなることをいう。打撃投手では、ほとんどの者がこのイップスを経験するといわれており、その最大の原因となるのが、この「緩い球でストライクが入らなくなること」なのだ。

 例えば、「松井秀喜の恋人」として知られる北野明仁氏は、巨人時代の落合からも打撃投手として指名された。しかし、山なりのボールでストライクゾーンに入れるのはかなり難しく、焦った末に、投げる時は右足が前か左足が前かも分からなくなるなど、イップスになりかけた。

 心配した落合が、「もうやめておけ、お前が潰れてしまう」と投げるのを辞めさせたことがあるという。

※週刊ポスト2012年12月21・28日号



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