トランプVSバイデン「空っぽ討論会」の先に見える超インフレ

NEWSポストセブン / 2020年10月24日 7時5分

討論というより、ただの喧嘩(AFP=時事)

 現地時間10月22日に、アメリカ大統領選挙の最後のテレビ討論会が行われた。前回のような発言妨害や暴言は見られなかったが、論争としては低調でつまらないものだったという評価が多い。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏も、討論そのものは空疎だったと分析した。

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 大統領選挙で、投票直前にテレビ討論会を行うことには大きな意義があると思う。アメリカの大統領選挙は、ほとんどの場合、2人から1人を選ぶ投票になるが、今回のようにどちらも不人気な候補の場合、有権者の多くはどちらに投票するか決められず、結局、棄権してしまうケースも少なくない。だからこそ、討論会でそれぞれの考えを有権者に見せることで、投票しようという意欲を引き出すことができるのは良いことだ。

 まして、トランプ大統領という人は、一度や二度、テレビで政策を聞いたくらいでは投票に値するかどうか決めることは難しい。政策も性格も一点にとどまることがなく、大統領としての良し悪しを判断するには、何度でも根気よく彼の話を聞く必要がある。その機会が与えられたという意味では、今回の討論会も歓迎すべきものだったと思う。

 トランプ氏は、今回の討論会で遅れを挽回できたのだろうか。答えはNOである。トランプ氏が繰り返し持ち出してこだわったのは、バイデン氏の息子であるハンター・バイデン氏がロシアやウクライナから不当なカネを受け取っていたという疑惑だった。スキャンダルで相手を圧倒し、一気に攻守逆転を狙う戦術だったが、有権者は動かなかった。討論会後の世論調査でも、バイデン氏が勝利したと見る有権者のほうがかなり多かったことからもそれはわかる。

 当然である。大統領選挙に出馬しているのは父親のジョー・バイデン氏なのだから、スキャンダルを持ち出すにしても、本人の話でなければ意味はない。息子の話で印象操作して有権者をひっかけようというのは虫が良すぎたのである。バイデン氏本人に対しても、これまでの政治キャリアでの失敗を挙げて何度も攻撃を仕掛けたが、そこは老獪なバイデン氏がのらりくらりと逃げて、ついに捕まらなかった。印象操作を仕掛けるトランプ氏と、具体的には答えずに逃げるバイデン氏、という構図で、およそ討論にはならなかった。

 アメリカ国民が一番聞きたかったのは、もちろんコロナ対策である。しかし、そこでも両者は中身のない非難合戦に終始した。バイデン氏は全国民にマスク着用を促したうえで、公共の場でもマスクを着けないトランプ氏を批判し、感染拡大は対策をとらなかったトランプ氏に責任があると強調した。それに対してトランプ氏は、フロリダ州やテキサス州では感染拡大が減速しているとして、「転換点を迎えつつある」と述べた。さらに、感染拡大は「中国のせいだ」と責任転嫁した。どうも両者ともにコロナ対策の本質がわかっていないのか、有効な政策がないから本質に触れたくないのか、どちらかではないかと疑いたくなる空疎さだった。アメリカに暮らす筆者にとっても、コロナとどう戦うかしっかり聞きたいところだったのだが、どちらの候補もそこに目新しい提案や決意は見せなかった。

 当然、コロナ対策は病気を抑え込むことと、経済を立て直すことが両輪でなければならない。今回の討論会を聞く限りでは、両者のどちらがホワイトハウスに入っても、やることは無尽蔵にカネを刷り、それを国民に配るだけのようだ。それが呼び水となって経済を活性化させるなら、一時的に財政赤字を許容することはできるだろう。しかし、二人の話を聞いていても、そうした経済の明るい展望は見えない。カネを刷るだけなら、その先にあるのは国民生活を破綻させる超インフレである。

 大国アメリカが沈み、夕闇に包まれる光景が遠くに見えるような討論会だった。

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