松重豊『孤独のグルメ』 食べるだけの姿で“画がもつ”ワケ

NEWSポストセブン / 2020年12月31日 7時5分

今年も大晦日スペシャルを放送(時事通信フォト)

 俳優の松重豊(57)が主演を務める人気ドラマシリーズ『孤独のグルメ』(テレビ東京)のスペシャルドラマ版が、12月31日に放送される。4年連続となった大晦日での放送だが、なぜ長年にわたって視聴者を魅了し続けているのだろうか。

 松重豊といえばバイプレイヤーとしてのイメージが強いという人も多いだろう。近年話題を呼んだドラマ『バイプレイヤーズ』(テレビ東京)のシリーズに出演していることも、そうしたイメージを補強している。だが『孤独のグルメ』は、そんな彼が2012年に初めて連続テレビドラマで主演を務めたシリーズだ。

 松重の俳優としての活動は1980年代からすでにスタートしていた。映画評論家の小野寺系氏は、松重の俳優としての特徴と映画デビュー作での印象深い役柄について次のように述べる。

「もともとは三谷幸喜が主宰する東京サンシャインボーイズや、蜷川幸雄の劇団で舞台俳優としてキャリアを重ねていました。映画やドラマに松重豊さんが出だしたのは1990年代からです。

 190センチ近い身長が特徴の松重さんですが、本人は高身長であることはデビュー当時は売りにならず、むしろ他の俳優とサイズが合わないためマイナスと考えていたと言っています。

 映画デビュー作となった黒沢清監督の『地獄の警備員』(1992)は、会社で夜まで見回っている元力士(!)が社内の人間を殺してまわるという、シュールな役だったのが印象深いです。ここでは、高い身長が“異物感”を醸し出して、むしろ役に馴染んでいるといえます」

 高身長であるという、当初は“マイナス”だと考えていた特徴を、松重はむしろ持ち味として活かし、唯一無二の俳優としての地位を確立していった。コミカルな演技からシリアスな役柄までこなせてしまうのは、舞台で培った演技力の賜物でもあるだろう。小野寺氏は続ける。

「近年、『検察側の罪人』(2018)で、木村拓哉演じる主人公に殺人をレクチャーする闇社会の人間の役を演じていましたが、長い手足と強面(コワモテ)が活かされていました。『孤独のグルメ』のほんわかした井之頭五郎とは違った、不気味だったりダークな役も似合う俳優だといえます」

 その演技力があるから、ひたすら松重がおいしそうに食べているだけでも“画がもつ”。一人飯だからセリフも大きな動きもないという制約の中、モノローグのナレーションとわずかな表情の演技だけで井之頭五郎の満足感が視聴者に十分伝わるのだ。加えて、大きな体躯を持て余すかのようにおとなしく食事を楽しむ様は、それだけでコミカルな魅力がある。

「ちなみに、『孤独のグルメ』のヒット以降は、外食すると無言で量を増やしてくれるなどサービスされて食べきるのが大変だったり、厨房からギャラリーとして従業員が見にくるなど、プライベートでは弱ってる部分があるそうです」(小野寺氏)

 どんな役柄でもこなせてしまう上に、視聴者が思わず親近感を抱いてしまうような雰囲気をも持ち合わせた松重豊。『孤独のグルメ』が8年間にわたって愛され続けてきたのは、そんな彼の脱力感溢れる魅力が詰まった作品だからなのかもしれない。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

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