錦織圭、大坂なおみ… 五輪1年延期がアスリートを天国と地獄に分かつ

NEWSポストセブン / 2021年1月8日 7時5分

東京五輪の1年延期がアスリートにどう影響したか(時事通信フォト)

 東京五輪の1年延期で、多くのアスリートの運命が変わった。猶予期間を得たことでスランプから脱出した選手もいるが、引退を決意した選手もいる。女子バレーボールの新鍋理沙(30)や女子バスケットの大崎佑圭(30)らだ。

 そして、リオ五輪のバドミントン・女子ダブルス金メダリストである「タカマツ」ペアの高橋礼華(30)も。東京五輪の代表レースでは後輩ペアの後塵を拝すなかで延期が決定し、引退を決断。自粛が解けた直後、ペアを組む松友美佐紀(28)にコンビ解消を伝えた。

 3人はいずれも1990年生まれの30歳。東京五輪を節目と考えていた彼女たちにとって、1年の現役延長には相応の覚悟が必要だったのだろう。

 一方で、ベテランの域に達しながら現役続行に迷いがないのが卓球の石川佳純(27)や女子ソフトボールの上野由岐子(38)だ。とりわけ上野は、2024年のパリ五輪で再び五輪競技から外れるソフトボールで、有終の美を飾るという一心で現役を続ける(東京五輪は追加種目として実施)。

 五輪の延期後にアクシデントに見舞われたのは、テニスの錦織圭(30)。8月にコロナに感染し、直後の全米オープンも欠場せざるを得なかった。対照的に2度目の全米制覇を遂げた大坂なおみ(23)は、世界ランク3位に浮上し、全米、全豪に続く3つ目のビッグタイトルも視野に入る。

 ちょうど1年前、海外のトーナメントに出場後、帰国の途に就くなかで自動車事故に遭ったのがバドミントンの桃田賢斗(26)だった。命に別状はなかったが、帰国後、シャトルが二重に見えることから再検査すると、眼窩底骨折が判明した。

 世界ランク1位だった桃田といえども、五輪の延期は眼と心のケアのためにも必要な時間だったかもしれない。復帰戦となった12月の全日本総合選手権で初戦に勝利したあと、桃田はこう語った。

「感覚のズレは、正直、ありました。リハビリでパフォーマンスが下がっていたので、(その状態から)こつこつと、できることがひとつひとつ増えていくのを実感しながら、パフォーマンスを戻すことができていると思う」

 コロナ禍の2020年に、苦しんだアスリートといえば女子ゴルフの渋野日向子(22)だ。2019年に全英女子オープンを制し、スマイリング・シンデレラと呼ばれた渋野は、オフに肉体改造に加え、アプローチを中心とするショットのバリエーションを増やすことに力を注いだ。

 ところが、約4か月遅れで開幕した2020年の国内開幕戦は予選落ち。イギリス・アメリカ遠征でも上位で戦えず、五輪の出場権を左右する世界ランキングでは国内3勝を挙げた古江彩佳(20)に抜かれ日本人3位に後退。

 しかし、12月の全米女子オープンでは最終日を単独首位で迎えるバウンスバック(立ち直り)をみせた。最終順位こそ4位となったが、パターが復調し、それがショットの不安を打ち消した。ランキングは再び五輪出場圏内へ戻ってきた。しかし、現在は五輪よりも、米ツアー参戦への思いが強い。

「もちろん(五輪を)開催してほしいですが、米ツアーに参戦する目標の過程に五輪があるという感じで考えています」

 アスリートにとって、1年365日はあまりに長い時間だ。だからこそ東京五輪の延期は、アスリートを天国と地獄に分かつのである。

レポート/柳川悠二(ノンフィクションライター)と週刊ポスト取材班

※週刊ポスト2021年1月15・22日号

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