取得に億単位の金がいる相撲の年寄株 協会理事長も「改革は無理」

NEWSポストセブン / 2021年1月10日 11時5分

年寄株をめぐる問題とは?(時事通信フォト)

 引退後の力士が親方として日本相撲協会に残るために必要な「年寄株」。年寄株がなければ、いくら現役時代は名力士で成績を残しても、協会を去るしかない。それゆえ、所有者にとっては強大な既得権益化し、高額売買が何度も問題になり、協会内では勢力争いの道具にもされてきた。

 こうした年寄株をめぐる悪弊を断ち切る最大のチャンスが、2014年の相撲協会の公益財団法人移行だった。

 税制上の優遇措置を受ける公益法人となる以上、不透明な金銭のやり取りを認めるわけにはいかず、年寄株は個人所有から協会の一括管理とすることに決まる。金銭による売買ができなくなり、借株も禁止された。ところが、である。

「結局は株を持つ親方が継承者を推薦できる権利を持ち、その継承者が先代に顧問料などを支払うことが認められた。実態として金銭の授受が温存されたのです」(協会関係者)

 借株についても、公益法人移行時点で借株の親方に「3年間の猶予」が与えられたが、「春日山」(元前頭・武州山)などは6年以上が過ぎた現在も借株で、移行後にも複数の借株が生まれた。

「たとえば、元前頭・翔天狼の襲名した『北陣』は現役の遠藤からの借株。11月場所中には元大関・琴奨菊が引退して『秀ノ山』を襲名したが、この『秀ノ山』を昨年2月まで借りていたのが元前頭・天鎧鵬。琴奨菊の引退が近いと察して現役の阿武咲が所有する『音羽山』に借り換えるドタバタがあった。借株は禁止だが、協会の規程で“年寄名跡一時的襲名”が認められていて、有名無実化している。昔と同じでカネを払える力士が親方として協会に残れるということ」(ベテラン記者)

 相撲部屋の継承は簡単ではない。部屋の土地・建物に加え、力士や床山、呼び出し、行司まで引き継ぐことになる。

「近年の年寄株の価値は1億円といわれるが、すべてを引き継げば最低でも5億円とされる。これを払える力士は少ない。横綱、大関経験者か、後援会組織がしっかりした人気力士ぐらい」(同前)

 2011年に相撲協会の公益財団法人化に際して、「ガバナンスの整備に関する独立委員会」で副座長を務めた慶応大学商学部の中島隆信教授はこういう。

「はっきりいって年寄株制度の運用は、公益法人とはいえないやり方です。当時、我々もかなり厳しく改革を求める答申を出しました。ただ、放駒理事長(元大関・魁傑)は“年寄株を巡るこれまでのやり方に手を付けることは無理です。権限もないし、力もない”と話していた」

 理事長自ら、「改革は無理」と諦めていたのだ。

「それでも理事長が“金銭的な取引はやめる”といったので、我々もよしとした。だが、当時は八百長問題のほうが注目を集め、年寄株の話はウヤムヤなまま公益法人認定されてしまった。

 本来、協会に残って仕事をすべき人が年寄株を手に入れられずに廃業し、逆に能力を著しく欠く人が金銭やタイミング、人間関係など不透明な理由で後継者として協会に残れてしまう。公益法人として望ましくないのは当然でしょう」(中島氏)

※週刊ポスト2021年1月15・22日号

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