故・金子哲雄さん 完璧な「死の準備」と弱音はかなかった妻の後悔
NEWSポストセブン / 2021年1月10日 7時5分
夫婦の在り方がさまざまであるように、夫婦の別れの瞬間にも様々な形がある。しかし、どの家庭にも等しく死後の手続きが存在し、パートナーの死は喪失感を残す。悲しみを乗り越え、煩雑な死後の手続きをこなすためには、事前に準備しておく以外方法がない。有名人の家族たちの人生経験からは、学ぶことが多い?─。
流通ジャーナリストとしてテレビや雑誌で引っ張りだこだった金子哲雄さん(2012年10月逝去、享年41)は、一分の隙もない「死の準備」をしたことで知られる。2011年6月に希少がんの「肺カルチノイド」の確定診断を受け、死を覚悟したその日から、残された時間を用いて自らの死を“プロデュース”した。哲雄さんの闘病生活に最後まで寄り添った妻の稚子さん(53才)が振り返る。
「夫は、『ぼくのものはハードディスク2枚を残して、あとは全部捨ててくれ』と言って持ち物を整理し、公証人立ち会いのもと『公正証書遺言』を作成しました。
おまけに、葬儀社を呼び寄せて葬儀の段取りから仕出し料理のメニューまで指定し、思い通りに進まなかったのは遺影に使う写真くらい。顔の横でグッドポーズをしている写真を希望していたのですが、葬儀社から『さすがに、これはまずい』とダメ出しされていました(苦笑)」(稚子さん・以下同)
楽しそうに準備を進める哲雄さんには、周囲が「本当に自分の葬儀の準備ですか?」と不思議がるほどだった。1300人が参列し、「伝説の葬儀」として語り草となっているあの日から8年あまり。稚子さんは「強いて言うならば」と、1つだけ心残りになっていることがあると語る。それは、稚子さん自身が“泣き言”を口にしなかったことだ。
「夫の病気がわかったとき、私は『揺るぎない杭になろう』と決めたんです。夫が病気に激しく翻弄されたとき、私がしっかり地中に埋まった杭になっていれば、そこを手がかりに、夫婦でまた前を向いていけると思ったから。だけど、気を張りつめすぎていたのかもしれません」
亡くなる少し前、哲雄さんは妻に、「稚ちゃんは厳しい人だ。でも、そこがいい。それでいいんだよ」と声をかけた。その言葉は、大きな励みになっていると同時に、稚子さんの心に迷いも残した。
「『寂しい』とか『つらい』とか、そういう弱音をもうちょっと言っておけばよかった。そうすれば、夫もあれほどきっちりした準備をしようと、あれこれ頑張らずにすんだかもしれない。
最期の日、私は涙が止まらず、さめざめ泣いていました。すると、『大丈夫だから。絶対に守るから、安心して』と約束してくれたんです。夫の本心だったと思います。私がこうした弱い姿をもう少し早く見せられていたら、夫自身ももっと弱音を出せた部分があったかもしれない」
「こうすればよかった」は過ぎたから言えることであり、どれほど完璧な準備をしたつもりでも、時には自分を責めてしまうことがある。夫の死後、終活ジャーナリストとして活躍する稚子さんは、自分と同じ境遇にいる多くの女性に思いを寄せる。
「現在、日本人の死因で多いのは、がん、心疾患、老衰で、いずれも認知機能が衰えない限り、闘病中でもコミュニケーションが可能です。しかし、夫が大病を患ったら、多くの妻は『私がしっかりしなくちゃ』と頭がいっぱいになってしまう。でも、少しは夫に甘えて、弱音をはくことも妻の務めなのかもしれない」
終活のプロにも、答えが出せない準備がある。
※女性セブン2021年1月21日号
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