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ちあきなおみ「私は夫のために歌っていた」29年姿を現さない理由

NEWSポストセブン / 2021年6月29日 7時5分

 しかしその3年後、最愛の夫・郷さんを病魔が襲う。肺がんだった。当時、郷さんは54才、ちあきは44才。ふたりの出会いから18年目の試練だった。テレビやコンサートの仕事に追われながらも、彼女は献身的に看病をしていた。

 ふたりを見守り続けてきた古賀さんは「郷えい治あってこその、ちあきなおみ」と語る。

「郷さんは、ちあきさんと出会い、役者を辞めて彼女を支え続けてきた。歌手・ちあきなおみに自らの半生を捧げた郷さんの気持ちに感謝し、その思いに添うようなところが、彼女にありました。

 郷さんの病状悪化とともに、歌番組などで『もうこのスタジオで歌うことは、あまりないかもしれませんが』などと冗談めかして発言していましたが、その実、本気だったと思います。郷さんがいないと歌えなくなるだろうなと、ぼくは薄々感じていました」(古賀さん・以下同)

 その予感は的中した。1992年9月11日、郷さんが55才で帰らぬ人となると、ちあきは表舞台から姿を消したのだ。古賀さんの胸には、ちあきのこんな言葉がいまも残っている。

「私は郷さんのために歌っていたんです。だから、もう歌うこともないし、幸せを感じることもない」

「沈黙」29年間、姿を現さない理由

 表舞台から姿を消してから29年。その間、幾度も特番が組まれ、ベスト盤が何枚も発売された。『星影の小径』や『黄昏のビギン』はCMソングとして起用され、毎年のように“紅白復帰説”が流れた。

 しかし、彼女は沈黙を守り続けたままだ。

「本心を勝手に計ることはできませんが、そこには、ちあきさんならではのこだわりと美学がある」と、ジャーナリストの石田伸也さんは言う。

「ちあきさんは、レコーディングのときはブースに幕を張って、歌っている姿を一切見せないほどの完璧主義。自分自身の中で100点を取れなければ許せないのかもしれません」

 いまなお、「もう一度、歌ってほしい」という声もあるが、「そっとしておいてあげたい」という声もある。ちなみに名曲『夜へ急ぐ人』を提供した歌手の友川カズキもその1人だ。

「ちあきさんが決めたことだから、そっとしておいてあげたい。だって郷さんという大きな存在を失って、また歌えっていうのは、酷だと思うんですよ」(友川)

 ちあきにとって歌はどういう存在なのか。前出・古賀さんは、次のように推測する。

「以前、『ちあきさんにとって歌って何なんですか?』と、尋ねたことがあるのですが、『死ぬときにわかる』と言っていた。ちあきさんにとって、歌は音色に乗せて歌うものではなく、人生そのもの。だから、沈黙自体も歌なのだと思います」

 生き方すべてが歌。だからこそ、彼女の歌は深く、長く人々の心を揺さぶり続けるのかもしれない。

取材・文/廉屋友美乃 取材/藤岡加奈子 写真・資料提供/石田伸也 写真/共同通信社 本誌写真部 参考文献/『ちあきなおみ 喝采、蘇る。』(石田伸也・徳間書店)、『ちあきなおみ 沈黙の理由』(古賀慎一郎・新潮社)

※女性セブン2021年7月1・8日号

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