ケータイ時代の写真館 「明るい遺影」「ロケ撮影」で需要創出

NEWSポストセブン / 2013年1月19日 7時0分

 今年は全国的に雪や雨に見舞われた成人式。あいにくの天候ではあったが、百貨店の振袖販売が好調に推移するなど、お金をかける傾向が目立った。「写真館」での撮影も好調だ。東京の京王百貨店新宿店の写真室では、記念写真の事前撮影は前年同比の1割増し程度。一人での撮影に加え、家族での撮影希望者が多く、撮影枚数が増える傾向にあったという。

 だが、写真館を取り巻く環境は厳しい。デジタルカメラやカメラ付き携帯の普及で、手軽に写真を撮る習慣が定着。それなりに美しい写真が、誰でも撮れるようになった。また、デジタル化にともなうDPE(写真の現像、焼き付け、引き伸ばし)市場の落ち込みの影響もある。2000年に約6000億だった市場規模は、2011年には約1200億円と、5分の1程度まで縮小。DPE業務を収益の一環としてきた写真館は減少傾向にある。

 そんな苦境のなかでも、昨今、新たな取り組みが目立ち始めている。

 全国で400店舗以上を展開する、子供向け写真館大手の「スタジオアリス」。1992年に1号店をオープンすると、その後、DPE業務からは撤退を決断。0~7歳向け写真に特化することで成長を続け、2011年期は過去最高益を達成した。人気ブランドやキャラクターものなど、500点以上の衣装を取りそろえ、大手商業施設内に立地するなど、使い勝手の良さが受けている。

 そのスタジオアリスは昨年12月、東京・六本木に大人向け写真館「Gratz(グラッツ)」をオープン。進行する少子化、競合店の台頭に対し、子供時代にスタジオアリスで撮影経験のある世代を、大人になっても取り込もうという狙いだ。

 スタジオアリスに限らず、新たな需要創出に動く写真店は増えている。その一つが、足を運んでもらう機会を増やすこと。昨今、自治体や学校などで実施されるようになった「2分の1成人式」(20歳の半分にあたる小学4年生で祝う)での記念撮影を呼びかけたり、マタニティフォト、遺影の撮影など、写真館で写真を撮るシーンを広げようと取り組む。

 2011年に日本写真館協会が新宿など全国3ヶ所で開催した「明るい遺影写真展」は多くの客を集めた。協会事務局長の菅野淳氏によると、元気なうちに望みどおりの遺影写真を撮りたいという希望は高まっているという。

 福岡の写真館「フォトスタジオビタミン」は、高齢者向けのプランを打ち出し好評だ。60歳以上限定で、ベース金額から年齢分を割り引くというもの。70歳は70%引き、100歳なら100%引き。大胆な価格設定で、写真に撮られ慣れていない世代を写真館に呼び込んだ。

 一方、写真館から外へ出る動きも活発だ。

 最近は、カメラ目線よりも自然な表情を好む人が増えており、ロケーション撮影と呼ばれる、屋外での撮影需要も増加。スタジオアリスは昨年から、水族館などアミューズメント施設でのスタジオ開設にも乗り出している。

 こうした動きを受け、前出の菅野氏も業界の今後に期待を込める。

「家族経営の写真館でも、2代目、3代目が新しいサービスを始めるなど、時代に合わせて変化できているところは持ち直しています。これまで写真館というと、特別な日に行く、やや敷居の高い存在でしたが、今後はもっとカジュアルなスタジオになっていく必要がある。もちろん品質は大事です。カメラが身近になったからこそ、プロの力が問われますし、一般の方が撮影する機会が増えたことで、プロの技術を分かっていただけるようにもなっています。

 あとはやはり少子化ですから、幼少期だけではなく、生涯にわたって利用していただきたい。震災後、年に一回、家族で写真撮影をされる方が増えているんですね。写真館は、ホームドクターならぬ、“ホームフォトグラファー”を目指して頑張っていきたいですね」

 東日本大震災の後、水や泥で汚れた写真を救う活動を支援する富士フィルムの「写真復旧ボランティア」は、大きな反響を呼んだ。写真は撮って終わりではなく、思い出とともに残し、折に触れて振り返ってこそ、永遠の価値を持つ。記念写真を残したいというニーズは、デジタル化時代でも普遍のようだ。



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