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薬物抵抗性うつ病の再発抑制に「rTMS療法」の有効性を検証

NEWSポストセブン / 2021年10月6日 19時5分

「rTMS療法」の特徴は?(イラスト/いかわ やすとし)

 AIを使ってオンラインでメンタルチェックができる『KOKOROBO』に携わっている、国立精神・神経医療研究センター病院第一精神診療部兼臨床心理部部長の鬼頭伸輔医師は、うつ病治療機器の反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の研究も進行中だ。rTMS療法とは専用コイルを頭部に当て、通電して大脳皮質を刺激、うつ症状を改善する。現在、薬物が効かないうつ病患者に週5日6週間までは保険治療が認められているが、再発抑制のため継続治療できるよう臨床試験の準備を整えている。

 厚労省の調査によると、うつ病など気分障害の患者数は平成8年では43万人強だったのが、平成20年には約104万人と12年間で2.4倍に増加した。病院で受診していない患者も多く、また新型コロナの影響で潜在患者はもっと増えているのでは、と予想されている。

 治療は抗うつ剤などの薬物療法が行なわれるが、3分の1の症例には薬物が効かないといわれている。そうした薬物抵抗性のうつ病に対して実施されている治療が、rTMS療法だ。これはM.ファラデーの電磁誘導の法則に基づき、生体を直接刺激する。

 使用方法は専用のコイルを頭部に当て200~300μ秒で瞬間的に電流を流す。するとコイル周辺に磁場が生じ、コイル内の電流とは逆方向に渦電流(誘導電流)がコイルの上下面に沿って流れる。この誘導電流が大脳皮質の神経軸索を規則的に繰り返し刺激して活動を変化させる。

 前述の鬼頭伸輔部長に訊く。

「うつ病は大脳皮質と脳の奥にある辺縁系とのバランスが崩れて起こります。よって、うつ病の治療は皮質と辺縁系のバランスを取り戻すことを目的としています。辺縁系は情動に関連し、皮質は認知機能に関連しています。抗うつ剤などの薬物は辺縁系を改善してから、皮質に作用します。rTMS療法は逆に、まず皮質に作用してから、辺縁系を改善し、バランスを取ります」

 抗うつ剤などの薬物は主にセロトニンとノルアドレナリンに作用するが、rTMS療法はドパミンを放出してドパミン系に作用する。薬物の効かない患者にはセロトニンとノルアドレナリンの分泌をさらに促進しても、効果が得られにくい。一方、rTMS療法ではドパミンの分泌を促進するため、効果が高まると考えられているのだ。

 rTMS療法は2019年6月に保険収載された。週5日6週間までは薬物抵抗性うつ病の急性期治療に限り、使用を承認。それでも、うつ病は再燃・再発しやすいので、予防のための維持療法の確立が求められている。そこで鬼頭医師のグループは急性期rTMS治療を実施した患者に対し、継続して治療を行ない、維持療法の効果を検証した。

「予備的な研究として6週間の急性期治療に反応、寛解した患者に12か月間の維持rTMS療法を実施したところ、12か月後も寛解を維持。その結果を受け、rTMS療法をうつ病の維持療法としても提供できるよう先進医療による臨床試験を計画しています」(鬼頭部長)

 先進医療の臨床試験では維持療法を行なう群と行なわない群に分け、その有効性を比較検証する。試験開始は2022年春の予定だ。

取材・文/岩城レイ子

※週刊ポスト2021年10月15・22日号

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