地頭よいが社会との接点少ない京大生は本当に就活に弱いのか

NEWSポストセブン / 2013年2月10日 16時0分

 就活で二強ともいえる東京大学と京都大学。しかし京大生は東大生と違って個性的で就活で苦労するという声もある。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が採用から見た京大生を解説する。

 * * *
「京大生は使えないって、本当ですか?」

 ある人から、こんな質問を頂きました。京大といえば、日本トップクラス、関西トップの大学であり、もともとは日本で2番めに出来た帝国大学です。その学生が使えないって、どういうことなんでしょう?

 よくよく聞くと、ネタ元はベストセラーになっている『採用基準』(伊賀泰代 ダイヤモンド社)でした。「マッキンゼーの採用マネジャーを12年務めた著者が初めて語る」という触れ込みだけに期待は高まりまくる本です。

 ちなみに、著者の伊賀泰代さんと著名ブロガーちきりんさんって、同一人物だという説が。いや、公然の秘密のようですね。マッキンゼーの方と会食した際は「ちきりんさんの面接でのジャッジはすごかった」という武勇伝を聞いたことがあります。ちきりんさんとお会いする機会があったら、「お前、伊賀だろ」と言うのは私のささやかな夢です。

 さて、本題です。京大生は使えないのでしょうか? 

 まず、誤解なきように・・・。同書は「京大生は使えない」と書いているわけではありません。たしかに「京都大学からの採用が難しいと感じます」という記述はありますけどね。

 どういう理由からかというと、もともとマッキンゼーの採用基準は、

1.リーダーシップがあること
2.地頭がいいこと
3.英語ができること

 であり、さらに現地法人であれば現地の言葉が出来ることがポイントとなるので、

4.日本語ができること

 が加わります。

 同書では、日本における採用においては1と3において、京都大学に限らず日本人は弱いと指摘しています。ただ、日本トップクラスであり、関西トップの大学である京都大学においては、関東のトップクラスよりもさらに厳しいと感じるのだそうです。

 その論拠として挙げられているのが、東京と違い「リアルな社会との接点」が少ないことです。東京は講演会や勉強会、インターンシップなどで起業家や社会人との接点も多く、ネット発のイベント、グローバルに開催されるイベントも豊富です。その過程で、「自分たちはまだまったく世の中では通用しない」という当たり前の事実を理解するとともに、「東京大学を出ています」などということにほとんど価値がないことを知るのではないか、と述べられています。

 英語力に関しても、京都大学では「英語ができないとマズイ」と真剣に考えている学生が驚くほど少ないのではないか、と。まあ、この本でも触れられていますが、これは東京とそれ以外の違いですね。外資系の拠点などは東京に集中しており、そこでインターンシップに参加できる機会などがあるわけですから。

 もちろん、ここでは「マッキンゼーの採用基準」やや広げて解釈すると、次世代リーダーを担う学生の採用基準から考えると、という意味ではあります。関西の名門大学は、よくも悪くも東京ほど就活熱が高くなく、就活に毒されずに大学生活を送りやすいというのはメリットもありますが。こういう環境だからこそ高まる力というのもあると信じたいですが、「採用基準」から考えると京大生は厳しいということでしょう。

 このように、同書では上記の理由から京大生は「採用が難しいと感じます」と言っています。

 ちきりんさん、じゃなかった、伊賀泰代さんがおっしゃることは当たっていると感じますが、ちょっと別の視点で私の個人的意見を述べましょう。

 京大生はですね、変わった人が多いという印象です。ちきりんさんが言っているように社会との接点が一般的には少なく、かつ地頭がよいと言われていることも一因でしょう。そもそも、企業社会に合っていないのではないかと思うほどの天才個性派が多いですね。あくまで印象論ですけど。私が最初に入社したリクルートは京大卒が多い会社でしたが、激しく頭がよく、一方で考え方が変わっている人が多かったですね。退職後の進路も政治家、ちょっと変わった業種での起業など、他大とは違っていました。私は京大生をラピュタ型人材と呼びたいです。激しく超越していて、天空に浮いているようだ、と。

 なお、そもそも論ですが、実はビジネスの場で、しかも文系職種の京大出身者と出会う場というのは、多くないはずなのですよね。京都大学は実はこじんまりとした大学です。同大学のホームページによると、平成24年3月の学部卒業者は2,893名なのですが、学部卒でそのまま就職したのは886人。そのうち104名は公務員ですから、民間企業で学部卒の京大生と出会う機会はどうやら少なそうだということがわかります。

 修士課程の卒業生は2,138人でしたが、そのうち就職した人は1,498人。これを合わせるとそれなりの人数になりそうですが、うち明らかに文系なのは93人です。理系はエンジニアや研究職になる人の割合が高いと考えると、特に文系よりの職場では京大卒と仕事をする機会はなかなかないということがわかります。

 ちなみに、この『採用基準』、面白い本ですよ。売れる理由がよくわかりました。「こうやったら内定が出る」というような就活本や、マッキンゼーの暴露本では決してなく、人材マネジメントだけの本でもなく、日本が今、直面している課題について、人材を切り口にして語る本なのだと、私は解釈しています。タイトルに『採用基準』とうたっているものの、マッキンゼー流の仕事の仕方とは何か、リーダーとはどんな人か、リーダーシップとは何かなど、世界基準の仕事のやり方、人材の採用の仕方、育て方を伝えている本だと私は解釈しました。

 マッキンゼーとその採用に関する誤解について、丁寧に説明しているのも良い点です。この手の本は、「欧米ではこうだ」「だから日本はダメなんだ」という話になりがちですが、この本は比較的丁寧に論じているなと感じ、好感が持てました。

 安心したのは、実はマッキンゼーという企業が「人間臭い」ことでした。別にロボットのような人間を求めているわけではありません。成長する可能性にかけていると感じた次第であります。

 話はやや戻りますが、皆さんのまわりの京大卒は、どんな人ですか? 職場に馴染めていますかね? ラピュタ型人材という表現、ご納得頂けましたかね?



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