本屋大賞『海賊』隠れた演出 『永遠の0』特攻隊員登場に「感動」の声

NEWSポストセブン / 2013年6月1日 7時0分

 今年の本屋大賞を受賞し、100万部を超えるベストセラーを記録している『海賊とよばれた男』(講談社)。作家・百田尚樹さんが、出光興産の創業者、出光佐三をモデルとし、企業の再生と戦後復興の闘いを描いたドキュメント小説だ。

 この作品に、百田さんの代表作『永遠の0』の宮部久蔵少尉が登場するシーンがあることが話題を集めている。宮部少尉は、終戦間際、ゼロ戦に乗り込み、特攻の一員として26才で亡くなった登場人物だ。

『海賊とよばれた男』の上巻の後半部分にこんな場面がある。主人公の国岡鐵造が中国・上海の日本軍の航空基地を視察した際、ゼロ戦から若い航空兵が降りてくるところに遭遇。

<若い航空兵は立ち止まり、海軍式の敬礼をした。鐵造は青年の無駄のない美しい動きに感服した。二十歳をわずかに過ぎたくらいの背の高い痩せた男だったが、全身から精悍な空気が漲っていた。胸の名札に「宮部」と書いてあるのが見えた>

 上・下巻で宮部少尉が登場するのはこの場面のみだが、ネット上では気づいた人の間で話題になっており、「感動して泣いちゃった」「憎すぎる演出」「ゼロのあの宮部さんだと思っただけで泣けてしまう」といった声が出ている。

 文藝評論家の末國善巳さんはこう指摘する。

「ほかの作品の登場人物を登場させる手法は、海外ではスティーヴン・キング、国内では京極夏彦さんなどがよく用いています。わかる人にはわかるぐらい程度に登場させることが多い。百田さんも、“遊び”“ファンサービス”として盛り込んだのではないでしょうか。

 また、鐵造と宮部という年齢も経験も違う2人が交錯する場面があることで、戦時中に地獄を見た日本人が、戦後、祖国を復興するためにどれほど懸命に闘ったのかがよくわかります。このシーンにより、日本の戦後復興の姿が立体的に見えてくるんです。この時代に生きた人たちが、同じ思い抱いて必死に生きていたということを示す強烈なメッセージにもなっています」

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