直木賞作家 震災で自分に一番悲しむ権利あると思う人に衝撃

NEWSポストセブン / 2013年6月12日 16時0分

【著者に訊け】辻村深月氏/『島はぼくらと』/講談社/1575円

 舞台は瀬戸内海に浮かぶ、本土から船で20分の〈冴島〉。限られた空間に限られた人間がいて、そこを出たり入ったりする島は、言われてみれば小説空間そのものだ。人々の関係性が密であればあるほど摩擦や軋轢もまた生まれ、事件や騒動や様々なドラマを生む──。

 辻村深月氏(33)の直木賞受賞後第一作『島はぼくらと』では、フェリーで本土の高校に通う4人の〈島の子〉を軸に、人口3000人弱の離島で繰り広げられる人間模様を描く。島に自然と不便が同居するように、人にも温もりと醜さの両面があり、それらを見つめる4人の曇りのない目が印象的だ。氏自身、刊行にあたってこう言葉を寄せる。

〈ずっと“闘う”ような気持ちで書いてきた「地方」や「故郷」のテーマの先に、こんな景色が広がっているとは思いませんでした〉

 そして辻村氏は最新作についてこう語る。

「出身は山梨県で、所謂“海なし県”です。四方を山に囲まれた故郷は私の原風景だけに愛も憎もあって、今までは地方の閉塞感を否定の積み重ねで表現してきた気がする。都会的な価値観に縛られ、田舎や自然の美点にこそ何かを求めるという流れにも賛同しきれなかったところに、3年前に瀬戸内の島々を泊まり歩く機会があって、自分の知る東の田舎とは全然違う田舎を目の当たりにしたんですね。

 遮るものが何もない、四方が海、という環境。あの圧倒的な光や開放感を借りるようにして、これまでと全く違う田舎・故郷像を書いてみたいと思いました」

〈池上朱里〉(いけがみあかり)、〈榧野衣花〉(かやのきぬか)、〈矢野新〉(やのあらた)、〈青柳源樹〉(あおやぎげんき)は高校のない冴島の4人きりの同級生。4時10分発が最終便のため部活は難しく、自然といつも一緒にいるが、衣花は代々続く網元の娘、源樹は東京から来たリゾート会社の一人息子など、家庭事情は様々だ。

 漁師の父を亡くした朱里は祖母と母の3人家族で、母は最近島のおばちゃんたちが公民館で地元の特産品を手作りしている「さえじま」の社長に籤引きで選ばれた。同社は村長が〈Iターン〉の誘致と併せて掲げる〈シングルマザーの島〉の受け皿でもある。若く美しい未婚の母〈蕗子〉や、軟弱だが人は悪くないウェブデザイナー〈本木〉、地域活性デザイナーの〈ヨシノ〉など、島を訪れる若者もワケありだ。

 物語は、島への最終便に自称作家〈霧崎ハイジ〉と4人が同乗したことで動き出す。霧崎はある著名作家が島に残した〈幻の脚本〉を探していると言い、脚本家志望の新は興味津々だが、衣花や源樹はどうやら盗作が目的らしい霧崎の魂胆を見抜き、ある計画を立てる。

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