“最後の相場師”こと是川銀蔵 遺産は2LDKマンションだけ

NEWSポストセブン / 2013年7月16日 16時0分

 1981年に住友金属鉱山の株を買い占め200億円の巨額な利益を得た是川銀蔵(これかわ・ぎんぞう 1897~1992)は、1983年に発表された高額納税者番付で全国1位となり、最後の相場師と呼ばれている。同時に、社会福祉事業にも力を入れていた是川銀蔵の足跡を、作家の山藤章一郎氏がめぐり、報告する。

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 鹿児島、熊本、宮崎3県の県境近くに〈菱刈〉という鉱山がある。質、量とも世界トップクラスの〈金〉を産出する。埋蔵量180トン、現在の金価格で1兆円。

 田んぼと山が広がっている田舎風景の地下200メートルに、100キロにおよぶ坑道がアリの巣状態で這っているという。白い筋となって坑道に露出した金鉱脈を破砕し、鉱石を人の手でひとつひとつ選り分ける。鉱石1トンに40グラムの金がある。世界の平均は数グラム。とてつもなく優秀な金山だといわれるゆえんである。住友金属鉱山の愛媛工場に運んで精錬する。

 元は、江戸中期に発見されたヤマである。このヤマに、昭和56(1981)年、是川銀蔵、通称・是銀が現われた。最後の相場師と呼ばれた人物である。前日の9月18日朝、是銀翁は〈日経〉の記事に目を吸い寄せられた。

「鹿児島県菱刈金山に高品位金鉱脈を発見」

 記事は、700メートルの間隔で打ち込んだ2本のボーリングが金含有量の優れて高い鉱石を掘り当てたとある。さらに金脈の上と下にある〈母岩〉が四万十層につながっていると推測していた。

 84歳の胸は動悸に搏(う)たれた。

 四万十層は、宮崎県青島のせんたく岩の地層で、四国の四万十川から九州南端まで続いている。翁は即座に確信した。不規則にたまたまそこに金鉱脈があったのではない。「広範囲にわたり(金脈は)続いている」(『相場師一代』小学館文庫)

 だが翌日、伊丹からすっ飛んで行った現場事務所ははぐらかす。

「これ以上掘っても、採算ベースに乗らない鉱脈が続く可能性が高いですよ」

〈菱刈〉を所有する住友金属鉱山の前日の株価は226円。投資戦術の鉄則は『買い出動を迅速に実行する』である。新聞に有望な材料の記事が出た以上、寸刻をあらそう。鉱山事務所の寝言など歯牙にもかけない。信用取引を含めて、買いまくった。1000万株を集めるのに250億円かかった。さらに買った。5000万株になった。年明け、705円でストップ高。

 だが、『天井に達する慾に迷ってはいけない』も鉄則である。

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