〔佐藤優×山口二郎〕岸田政権とは何だったか「宏池会幻想は幻想だった」「消去法で選ばれただけ」
NEWSポストセブン / 2024年9月24日 11時13分
その点で、岸田さんは宏池会の会長ではありましたが、安倍さんがつくった疑似的冷戦構造に関して個人的な考えを何ひとつ言っていません。
たとえば二〇二三年八月三〇日、松野博一官房長官(当時)が記者会見で、関東大震災時に起きた朝鮮人虐殺について「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することの出来る記録が見当たらない」と述べました。その後の参議院内閣委員会(一一月九日)でも松野さんは同じ答弁を繰り返しましたが、岸田さんは「特定の民族や国籍の方々を排斥する不当な差別的言動は許されない」(一一月二九日、参議院予算委員会での答弁)と抽象的な答弁をしただけで、松野さんの政府見解を引っ込めることはありませんでした。
朝鮮人虐殺に対する日本政府の見解という問題が、国際的にどう評価され、どんな反応を呼ぶのかを首相が深く考えていない。私は疑問に思いました。それこそ学術会議問題で「除外リスト」に載せられた加藤陽子さんらの本をきちんと読んでいれば、このような答弁はしないはずです。佐藤さんの言われる「学知」に縁がないと言うか、無関心なのかもしれません。
私は、「かつての宏池会の政治家は読書量も教養も豊かだった」と述べましたが、宏池会に象徴される知的で穏健な保守政治家の層が薄くなったことを感じます。その意味で岸田さんは、今の自民党そのものです。
岸田さんは自民党総裁選(二〇二一年九月二九日)に出馬した際、「新しい資本主義」を経済政策の看板に掲げました。池田勇人さんの「所得倍増」を意識したような宏池会的なメッセージです。しかし中身がありません。必死にアピールしているのは新NISAですが、これは所得倍増ではなく資産所得を増やすこと──国民に「株式投資や投資信託で得られた利益を非課税にしますから、どんどん投資してください」とする制度設計です。
新NISAは、若年層を中心にそれなりにヒットしているようですが、投資を経済政策の売りにするというのは、岸田政権が深く考えずに、流れのなかで政策を打ち出した感が否めません。株価が逆回転を始めたら、国民は政府を恨むかもしれません。
消去法で選ばれた岸田文雄総裁(佐藤)
二〇二一年の総裁選に立候補したのは、岸田さん、高市早苗元総務大臣、河野太郎規制改革担当大臣、野田聖子幹事長代行の四人です(肩書は当時)。総裁選は、国会議員票(三八二票)と党員・党友票(三八二票)の計七六四票で争われました。
この記事に関連するニュース
-
日本の選挙は多すぎる…憲政史家が指摘「実質的な首相選びである自民党総裁選が総理任期中に行われる矛盾」
プレジデントオンライン / 2024年9月26日 17時15分
-
「最有力の首相候補」が"最下位のビリ争い"の大誤算…河野太郎氏が自民党員から見放された決定的理由
プレジデントオンライン / 2024年9月25日 8時15分
-
泡沫候補から「次の首相」の"本命候補"に急浮上…高市早苗氏が「保守派のプリンセス」になった本当の理由
プレジデントオンライン / 2024年9月24日 18時15分
-
〔佐藤優×山口二郎〕岸田政権で進んだ「派閥の脱個性化」解散しても残る“派閥のようなもの”
NEWSポストセブン / 2024年9月24日 11時14分
-
23年前の「小泉劇場」とは全然違う…父親そっくりでも「進次郎劇場」が行き詰まる"失言以外"の3つの理由
プレジデントオンライン / 2024年9月10日 16時15分
ランキング
-
1捜査員に踏み込まれた容疑者、ホテル3階から飛び降り上半身裸の下着姿で逃走…神戸市垂水区
読売新聞 / 2024年9月27日 10時7分
-
2自民新総裁、午後に選出=石破氏19道県、高市氏12府県でトップ
時事通信 / 2024年9月27日 12時44分
-
3石破茂vs高市早苗「最終決戦」の行方…総裁選あす投開票“三つ巴の争い”も進次郎は脱落ムード
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月27日 9時26分
-
4麻生副総裁、決選投票に残れば高市氏を支持へ…岸田首相は別の候補を支持する意向
読売新聞 / 2024年9月27日 6時40分
-
5出直し兵庫県知事選挙、維新は独自候補擁立を検討…対決姿勢で批判回避狙う
読売新聞 / 2024年9月26日 22時27分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください