【独走レポート】「山口組分裂抗争」10年目の重大局面へ 宅配業者を装ったヒットマン(63)の執念と幾重にもねじれた哀しき人生
NEWSポストセブン / 2024年9月24日 11時15分
1996年7月10日、会津小鉄会のヒットマン部隊が、京都府八幡市の理髪店で散髪中の山口組中野会・中野太郎会長を襲撃した。中野会長のボディガードが拳銃で応戦し、会津小鉄の2人を射殺し、中野会長に怪我はなかった。
「殺された2人の法要に、会津小鉄を絶縁になった組長に付き従っていた若い衆が参列したんです。暴力団社会では、組織を処分になった人間とつるんでいるのは絶対のタブー。吉井さんはそいつを不意打ちしてぶすっといきよった(※刺した)。この事件で懲役に行った。出所した後は中島会に戻らず、会津小鉄六代目となった馬場美次会長に拾われた。だから会津での最終的な経歴は馬場組です」(会津小鉄会元幹部)
2015年に山口組が分裂すると、会津小鉄会は離脱派の神戸山口組側と連携する。会津小鉄の会長である馬場六代目が、神戸山口組のトップ・山健組四代目井上邦雄組長と兄弟分だったからだ。
2017年、山口組分裂のあおりを受け、今度は会津小鉄会が分裂してしまった。弘道会をはじめとした六代目山口組側は、会津小鉄会から絶縁になった若頭を支援して後見となり、当方こそが正当な会津小鉄会だと主張した。神戸山口組の支援を受けていた旧勢力はこれと真っ向から対立し、双方が七代目会津小鉄会を名乗るという前代未聞の事態に陥った。
私はどちら側の襲名式も取材し、会場内に入って写真を撮ったが、馬場六代目会長が代目を譲った金子利典七代目の襲名式には、吉井容疑者の名前を書いた書き出しがあり、当然、彼も式場にいた。
「筋を違えたらめちゃくちゃ」
翌日、関係者に呼び出された京都市七条の喫茶店には吉井容疑者も来ており、これまでの経緯と自陣営の正当性を説明された。
「どれだけ正当性を主張しても、ヤクザなんだから強い側の言い分が筋ですよね?」
取材ノートをみると、私の投げやりな反駁に、吉井容疑者はこう答えている。
「あなたは長くヤクザを取材してわかったふうな気持ちなのかもしれない。でもこの世界、筋を違えたらすべてがめちゃくちゃになる。是は是、非は非。なにがあってもそれを変えてはならない」
その後、吉井容疑者は金子会長の元を離れ、刑務所で知り合い舎弟分となっていた弘道会稲葉地一家の総裁を頼り、移籍した。その後、二つの会津小鉄も合流し、吉井容疑者の古巣は弘道会に出向いて頭を下げた。
吉井容疑者は自宅だった分譲マンションから名古屋に引っ越していたが、ちょくちょく京都に帰っていたらしい。事件のおよそ10日前も、京都を訪れ、旧友たちと飲んだそうである。
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