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「むしろ孤独死のほうがいい」とまで考えた作家・真梨幸子さんが死後の準備を思い立ち作成した「オリジナル終活ノート」

NEWSポストセブン / 2024年9月29日 11時15分

 また、真梨さんは「イヤな思い出」も「終活ノート」に吐き出すことを提唱している。

「人生、いい思い出もあればイヤな思い出もありますよね。後悔していることや、許せないできごと……そういったものも、時間をかけて言語化することで納得したり、乗り越えられたりします。それこそが、自分の人生と向き合い、良いものにしていくということではないかと思うんです」

 十人十色、必要な「終活」は人によってまったく違う。まずそれを知ることが納得いく最期を迎える第一歩なのかもしれない。

 こうした終活の経験を活かし、「オリジナル終活ノート」の一部も収録した小説『ウバステ』を上梓した真梨さんから、エッセイを寄せてもらった。

 * * *
 我が亡き後に洪水よ来たれ。

 これを口癖にしていたのは、フランスの国王ルイ十五世。その愛人だったポンパドゥール夫人の言葉を、そのまま座右の銘にしてしまったようです。似たような言葉に「後は野となれ山となれ」というものもあります。どちらも、「後はどうなろうと知ったこっちゃない」というような意味合いです。私もどちらかというとそういう考えでした。なにしろ気楽なおひとり様。夫婦間のいざこざや嫁姑の確執、そして子育ての苦労など、さまざまな面倒を放棄して生きてきました。そんな私が、

「いやいや。私が亡き後、洪水が来たら困る!」

 と思うようになったのは、猫と暮らすようになってから。この子をおいて死ぬわけにはいかない、死んだとしても、この子が路頭に迷うようなことだけはしたくない!

 折りも折り、母が危篤状態になりました。蘇生が施されて一命は取り留めましたが。……病室に駆けつけると、水死体のようにパンパンに浮腫んで、管だらけで横たわっている母がいました。変わり果てた姿に、逃げ出したくなったほどです。それから数日後、母の意識は戻り会話もできるようになりました。せっかくの機会だからと「臨死体験とかした?」と訊くと、「うん、した」と。それはとても幸福感にあふれた素晴らしい時間だったとか。亡くなったはずの懐かしい面々が続々と集まり、自分をどこかに誘う。それに従おうとしたとき、胸に強烈な痛みが。そして、口の中になにか管を入れられて。母は言葉にならない叫びを繰り返したそうです。

「このままみんなと行かせて!」

でも、母は生き返ってしまいました。

「あのまま、みんなと行きたかったのに……。この状態で生きるのかと思うと地獄だよ」

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