『風立ちぬ』論争に森永卓郎氏「禁煙派が共鳴したのは収穫」

NEWSポストセブン / 2013年8月21日 7時0分

作曲家のすぎやまこういち氏は、愛煙家たちが集まる「喫煙文化研究会」の代表という横顔も持っている。常々、すぎやま氏は言っている。

<クリエーターにとっては、喫煙はアイデアを生み出す瞬間。たばこの害ばかりが強調される昨今だが、たばこは大切な文化であるという面をアピールしたい>

 また、脚本家の倉本聰氏は、講演を依頼された健康フォーラムでこんな発言をして会場を沸かせたという。

<僕は『北の国から』を21年間書いたけれども、これは46万本の『ラークマイルド』と1004本の『ジャックダニエル』によって書けた。それでも百害あって一利なしか!>

 発想の転換を促し、仕事や生活に潤いをもたせてきた嗜好品文化。だが、そうした豊かさを主張する声も、「健康に悪いものは文化ではない」とかき消される時代になった。

 この夏、大ヒット公開中の宮崎駿監督のアニメ映画『風立ちぬ』は、ついにスクリーン内で登場人物が紫煙をくゆらせる“喫煙シーン”まで問題視された。

「教室での喫煙場面、職場で上司を含め職員の多くが喫煙している場面、高級リゾートホテルのレストラン内での喫煙場面など、数え上げれば枚挙にいとまがありません。(中略)過去の出来事とはいえ、さまざまな場面での喫煙シーンがこども達に与える影響は無視できません」

 製作サイドのスタジオジブリに配慮を求める文書を送ったのは、医師らでつくるNPO法人の日本禁煙学会だ。すかさず、冒頭で紹介したすぎやま氏もこう反論した。

<映画の舞台になった昭和10年代の喫煙率に記録はないが、1950年(昭和25)には男性の84.5%が喫煙していた。当時の状況を再現するにあたっては、極めて一般的な描写である>

 災害、戦争など大正から昭和にかけての動乱期を描いた同作品。あからさまな戦争場面こそ出てこないが、当時はたばこの売り上げが戦費として国の重要な財源にもなっていた。登場人物たちの設定・シーンからたばこを除いてしまったら、時代背景がリアルに伝わらないと、宮崎監督は考えたはずだ。

 経済アナリストの森永卓郎氏は、行き過ぎた“禁煙ファシズム”に怒りを隠せない。

「嫌煙派の人たちが禁煙キャンペーンを張るのは自由ですが、文化や芸術に介入して、歴史事実まで捻じ曲げようとする権利はどこにもないはずです。

過去のあらゆる作品には、良かれ悪しかれ人々の生活や世相を映した喫煙シーンが出てきます。1970年代にヒットしたダウン・タウン・ブギウギ・バンドの『スモーキン・ブギ』もしかり。そんな名曲もなかったことにしろと言うんですかね」

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