ラブホ舞台の作品で直木賞受賞の桜木紫乃が語るラブホ裏側

NEWSポストセブン / 2013年8月26日 7時0分

 桜木紫乃さん(48才)の作家人生は一夜にして大きく変わった。

 7月17日、『ホテルローヤル』で直木賞を受賞。瞬く間に時代の寵児となって、取材が殺到するほか、サイン会を頼まれたり、新聞各紙からエッセイの執筆依頼が相次ぐ。受賞記者会見で語った「娘に弁当を作る」主婦としての日常もまた変わったに違いない。

 物語は、釧路湿原を見下ろす高台に建つ「ホテルローヤル」というラブホテルが、閉館して廃虚と化した後から、40年前のホテル開業前まで順にさかのぼる連作の形で、そこに行き交う人々の少し切ない日常を切り取った短編7編が収録されている。

 この舞台となった「ホテルローヤル」は、昨年まで釧路に実在したホテルだ。

「私ね、ホテル屋の娘なんです。『ホテルローヤル』というタイトルも、父が経営していたホテルの名前をそのままもらっています。城のように白い壁にオレンジ色の屋根という派手な外観や、建物の構造、場所も、ばっちりモデルにしました(笑い)」(桜木さん・以下同)

 実際の「ホテルローヤル」が誕生したのは、桜木さんが16才になる年のことだった。

「父は、元は床屋でしたが、1億円という莫大な借金をしてラブホテルを始めたんです。私たちの住まいもラブホテルの事務所の上でした。常に他人が出入りして、いろいろな人と出会える場所でもありました。借金を返していくために、私も高校から帰るとジャージーに着替えて、毎日手伝っていたんです」

 手伝いとは、お客さんが帰った部屋に入り、生温かさの残る乱れたベッドのシーツを取り換え、使用済みのコンドームを片付け、風呂掃除し、部屋を整えるというもの。

 何も知らない10代の少女にとって、どれほど過酷な手伝いだっただろう。何を思いながら、働いていたのだろう?

「ぐちゃぐちゃになったベッドを見て、大人って体を使って遊ぶんだと思った記憶は、ずっと残っています。15分で帰るお客さんもいれば、24時間過ごすお客さんもいる。

 15分だから、お風呂かベッドどっちか使ってないだろうと思うと、全部使ってて、びっくりして。15分でもできるし、24時間いてもできること、一体みんな何をやってるんだろうと、お客さんが帰った部屋でひとり考えました。幼い頭で、ラブホテルは“大人の遊園地”なんだ。“大人の遊び”は、人それぞれなんだとも思いました」

 すべてを投げ出してしまいたくなったり、大人への嫌悪感を覚えて将来を絶望したことは、なかったんだろうか。

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