「神の手」執刀医の心臓バイパス手術実況した患者 現状を解説

NEWSポストセブン / 2013年12月1日 7時0分

 医師でジャーナリストの富家孝(ふけ・たかし)氏の「不安定狭心症」の手術を録画し、執刀した「神の手」と称される心臓外科医・南淵明宏(なぶち・あきひろ)氏とともに実況中継するという企画が実現した。富家氏が、昨年12月26日の手術を振り返る。

 * * *
 手術は4時間19分。心臓バイパス手術としては非常に短い。私は、手術から数時間後にICU(集中治療室)で目を覚ましましたんですが、意識はとてもクリアで、術後の痛みもまったくなかった。
 
「お目覚めですか~」
 
 南淵先生は、目を覚ました私を見てニッコリ。えらい余裕や。どうやら、私の心臓は彼にとっては与しやすい相手だったようで……。
 
「心臓やその周りの血管というのは、80歳でも丈夫な人もいれば、50歳でフニャフニャの人もいます。脂肪量や血管の太さも個人差がありますが、富家先生は筋肉、動静脈など身体全体が若々しく、手術しやすかった。元相撲部なだけありますわ」(南淵氏)
 
 せやろ、体力にだけは自信ありますさかいな。
 
 とはいえICUを2日で出られて計13日の入院で済んだのは名医の腕あってこそ。大概のバイパス手術患者はICUに1週間近くいますし、もし手術中にトラブルでもあれば、それだけ医療費がかさみます。
 
 私の場合、入院・手術の費用は240万円程度でしたが、保険適用のため自己負担額は24万円ほどで済みました。あれほどの技を見せられると、「こんな安くてええんかいな」と思ってしまうほど。手術からまもなく1年ですが、おかげさまですこぶる良好。血色がよく肌もツヤツヤなので、心臓手術をしたというと驚かれます。
 
 大好物の鍋物と一緒に焼酎など酒も大いに愉しんでいます。他にも嬉しかったのが、バイパス手術をしたら血圧がスッと下がったこと。詰まりが取れたという証ですね。ずっと服用していた降圧剤に頼らなくてもよくなりました。
 
「身体のどこかの血流が悪いと、心臓は一生懸命に血圧を上げて血液を流そうとする。高血圧はダメというけれど、やみくもに血圧を下げるよりも、なぜ血圧が高くなったか、その原因を探ることのほうが大事なんです」(南淵氏)
 
 今や私は健康そのものやけど、あの時痛みを見過ごしていたら、どうなっていたかと思うと恐ろしくなりますわ。身体の異変にどうすばやく対処するのか──そこが分かれ道なのだと、身に染みます。

「病気に絶対の予防法はありません。痩せていようが、食事や生活習慣に気をつけようが、身体を鍛えようが、人間、病気になる時はなるものなんです。特に心臓は命にかかわる。
 
 病気を受け止め、手術を決断することが怖いことはよくわかります。ですがリスクを抱えたまま放置していても、心臓や冠動脈はどんどん悪くなるだけ。心臓が弱れば、手術しても回復できません。カテーテル治療は根治にならないと私が主張するのは、そのためなんです。早めに対処をすれば身体への負担も少なく、そればかりか効果も高い。もしもの際は、手術に踏み切る勇気を持っていただきたいのです」(南淵氏)
 
 年齢で手術を断念する例も巷でよく聞きますが、それも医師の腕次第。私がいた病室の隣には、87歳と83歳の患者さんが同じくバイパス手術を受けて、ピンピンしてらっしゃいましたわ。
 
 事実、他の病院から「80歳以上なので手術を断わられた」と、南淵先生を頼ってこられる患者さんも多いそうです。まさに医師との出会いが明暗を分けます。
 
 私が目安としているのは年間100例の心臓手術をこなしているかどうか。それだけの場数を踏んでいる医師は全国でも数えるほどですが、そういう医師であれば安心して任せられるんやないでしょうか。

◆南淵明宏(なぶち・あきひろ)/1958年奈良県生まれ。奈良県立医科大学卒。国立循環器病センター、セント・ビンセント病院(シドニー)、シンガポール大学病院、新東京病院、大和成和病院などを経て、2010年12月より東京ハートセンター・センター長に。「ゴッドハンド」として知られる屈指の心臓血管外科医。

◆富家孝(ふけ・たかし)/1947年大阪府生まれ。慈恵医大卒。日本女子体育大学助教授、早稲田大学講師、青山学院大学講師などを経て、現在は新日本プロレス・コミッションドクター。著書に『医者しか知らない危険な話』(文春文庫)など。

※週刊ポスト2013年12月6日号

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