IT最先端国ベラルーシ 高能力低コストで業界から熱視線

NEWSポストセブン / 2013年12月22日 7時0分

 企業の競争力を考える時、どれだけ業務を効率化し、コストを下げられるかが重要であることは論を俟たない。欧米のIT企業では積極的にプロジェクトをアウトソーシングすることで競争力を向上させている。そうした強い企業から、いま熱い注目を浴びている国がある。ベラルーシだ。現地を訪れた大前研一氏がその最先端のモデルをリポートする。

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 東欧のベラルーシは、ほとんどの読者にとって馴染みがない国だろう。1991年に旧ソ連から独立した共和国で、首都はミンスク。東にロシア、南にウクライナ、西にポーランド、北西にリトアニア、ラトビアと国境を接している。

 国土面積は20万7600平方キロメートル(日本の半分強)だが、人口は941万人と多くはない。1人当たりGDPは5820米ドル。アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の独裁体制が20年近く続いている、世界でも稀に見る閉鎖国家だ。そのベラルーシを、私は10月に訪れた。

 いま世界で大流行しているスマートフォンやタブレット端末用の無料通話・無料メッセージアプリに「バイバー(Viber)」というものがある。LINEと似たようなアプリで、ヨーロッパで人気のあるシステムだ。

 そのバイバーを提供している「バイバー・メディア」というイスラエルの会社(本社登記地はキプロス)の開発拠点がベラルーシにあると知り、国境をまたぐ知的ワーカーがどれだけいるのか、どのくらいの能力があるのか、興味を持ったのである。

 実際に行ってみてわかったのは、ベラルーシは世界でも最先端と言える「IT国家」になっていることだった。ベラルーシでは年間約1万8000人のIT技術者が大学を卒業する。この人たちをできるだけ国内に留めておくため、首都ミンスクにハイテクパークを建設して海外から企業を呼び込み、雇用先を確保している。ロシアのように原油や天然ガスが豊富な資源国ではないため、「ITで稼いでいこう」という国家ポリシーが非常に明確だ。

 ベラルーシでも最大規模のIT企業は「EPAMシステムズ」というソフトウェア会社である。アルカディ・ドブキンという人物が創業者・CEOで、本社はアメリカにあるが、オペレーションの中心はベラルーシ。ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ポーランドなどに展開している。売上高は約500億円で、8000人がシステム開発に携わる。ニューヨーク証券取引所に上場して時価総額が1600億円以上に達している上、グーグルなどの大手IT企業が基幹システムを発注しているため、アメリカでも大きな注目を集めている。

 IT業界でベラルーシに熱い視線が注がれている最大の理由は、能力が高くてコストが安いことだ。前述のバイバー・メディアはベラルーシで300人ほど雇用しているが、その人件費は月500ドル(約5万円)ほど。イスラエルでソフトウェアを開発すると月5000ドルくらいかかるから、なんと10分の1である。日本の大手企業に開発を頼んだ場合は、技術者1人あたり月80万~200万円、ディスカウントしても月50万円なので、ベラルーシの競争力はまさに破格である。

※SAPIO2014年1月号

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