安倍晋三首相も愛用する世界初GPSソーラー腕時計の開発秘話

NEWSポストセブン / 2014年1月19日 7時0分

 1969年、ひとつの腕時計が世界を変えた。日差±0.2秒という超高精度を誇る世界初のクオーツ式腕時計『クオーツ アストロン』が、“クオーツショック”を与え、腕時計市場に革命を巻き起こしたのだ。あれから40余年。甦った『アストロン』が、再び第2の革命を起こそうとしている。

「それは、腕時計業界の“夢”でした」

 世界初のGPSソーラー腕時計『セイコー アストロン』の商品企画に携わったセイコー第一企画部の古城滋人(こじょう しげと)は、感慨深そうにいった。

 上空約2万kmにあるGPS衛星のうちの4基以上の信号を受信できる『セイコー アストロン』は、たとえ砂漠の真ん中でも、あるいは大海原に浮かぶ船の上であっても、正確な時間を表示できる。

 古城がこの“夢の腕時計”の開発チームに加わったのは、2010年のことだった。ある日、上司からそっとこう耳打ちされた。

「今度、極秘プロジェクトの会議がある。商品企画チームの一員として君が出席してくれ。ただし誰にも気づかれないように。会議の内容は、社外はもちろん、社内でも一切他言無用だ」

 会議には、上層部のほか、開発、マーケティングの担当者、そして製造会社のセイコーエプソンの技術者も参加していた。席上、セイコーエプソンがGPS受信機を搭載した新しいソーラー腕時計を開発中であること、そしてセイコーウオッチ内にその商品化に向けたプロジェクトチームを発足させることが発表された。

 セイコーウオッチは、世界でも数少ない「マニュファクチュール(主要パーツを、系列会社を含めた自社で開発、製造するメーカー)」として知られる。クオーツ、GPS分野におけるセイコーエプソンの技術力と、“マニュファクチュール”であるセイコーウオッチの商品企画力という、二人三脚のプロジェクトがスタートした。

 頭を悩ませたのは省電力化だった。GPSモジュールを駆動させるために必要な電力は、クオーツ式腕時計の約1万倍。既存パーツは使えず、すべてゼロから開発しなければならない。GPSアンテナの形状やソーラーパネルのサイズ、搭載位置も徹底的に見直された。いくつも試作品が作られ、そのたびに極秘会議が開かれた。

「会議に出るたびに試作品がどんどん小さくなっていくんです。驚きました」

 会議は“極秘”が貫かれた。会議でのメモやデザイナーとのやりとりで描かれたデッサンなどは、社外流出を防ぐため会議後断裁する、という徹底ぶりだった。

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