CMへの苦情 右脳的な不快感配慮だけでなく左脳的要素追加

NEWSポストセブン / 2014年2月5日 16時0分

 ドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ系、水曜10時)が養護施設の子供への偏見を生むなどとの批判を受け、番組スポンサー企業全社がCMを自粛した騒動が波紋を呼んでいる。自粛の波が及ぶのは番組制作だけではない。

「私はコレで、会社を辞めました」

 そう言って、カタブツ風の男性が、小指を立てて見せる。1980年代の禁煙パイポの名CMだ。同CMもおそらく今の時代なら、流行語どころか「不謹慎」「教育上不適切」などという声に屈していたことだろう。歴史を繙けば、CM自粛が最初に始まったのは1989年の昭和天皇崩御だ。

 日産セフィーロのCM「みなさ~ん、お元気ですか~」(井上陽水)の音声が消される出来事をご記憶の方も多いだろう。「明るいCMは不謹慎」という風潮は、東日本大震災のCM自粛にも通ずるものがある。ただし、配慮しすぎることが違和感に繋がることも。

「AC(公共広告機構)のCMばかり流れ、息苦しいとの声が出始めた際、エステーが消臭剤のCMを流した。ミゲル君という少年が元気よく歌うCMでしたが叩かれるどころか、意気消沈している日本人に元気を与えた、と評価されました」(広告関係者)

 ただしそれは一部の例、リスクを冒してまで自社のメッセージを伝えようとする企業は稀である。

 全日空は、今年3月から羽田空港発着の国際線が増えることをアピールしたCMで、お笑い芸人のバカリズムが付け鼻・金髪姿で登場したことが、「外国人をステレオタイプに見ている」との批判を受け、放送を中止した上で問題シーンを差し換えるなど内容を修正。

「3月30日からの羽田発着増便を踏まえ、日本人もこれからはもっと海外で活躍し、世界で必要とされるようになっていこう──という意図でこのシーンを作成しました。当社の意図と異なるご意見をいただいたことについては真摯に受け止めます」(ANA広報部)

 キリンビールは、今年1月缶チューハイのCMにカエルのキャラクターを採用したところ、「お酒のCMにあんな可愛げのあるキャラクターを使用してはいけない」「未成年の飲酒を誘発する」という指摘を受け、放映を取りやめた。

「アルコール問題を扱う団体からお声をいただきました。弊社は一般のCMの基準よりもさらに厳しい独自の基準を設けているのですが、ご指摘を真摯に受け止め、放送中止を決めました」(キリン・コーポレートコミュニケーション部)

 昨年11月、「エロすぎる!」と問題になったのは、食用きのこメーカーのホクトが販売する無菌きのこのCMである。きのこの精(要潤)が買い物する主婦に「普通のきのこと立派なきのこ、味がいいのはどっち?」と囁き、立派なきのこを握らせるといった“大人のユーモア”満載のCMだったのだが……。

「10月後半から11月上旬に流したCMについて、一部のお客様からお声が寄せられ、内容を差し替えました」(ホクト営業企画室)

『宣伝会議』編集長・谷口優氏は、こう語る。

「以前のCM作りでは、見た目が嫌などの感覚が左右する、いわゆる“右脳的”な不快感に配慮していました。今はそこに“左脳的”要素も加わった。コンプライアンス上も、突っ込みどころがないと“理論武装”してからでないと作れなくなってきています。

 ますます説明的なものが増え、“冒険と挑戦”は減っていきます。社会に対して意見をいえず、物議を醸すならやめておこうという力が働くようになってしまうのです」
 
 企業側の過剰自粛がCM文化の衰退を招いているというのである。

※週刊ポスト2014年2月14日号

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