クリミア情勢「客観的に見て米欧に大義がない」と大前研一氏

NEWSポストセブン / 2014年4月14日 16時0分

 人口約200万人。面積にして北海道の3分の1ほどにすぎない小さな半島が世界を混乱に陥れた。「米露関係は冷戦終結後で最悪」とされ、日本ではロシアを非難する論調が目立ったが、それは一方的な見方だ。大前研一氏は、日本は今こそアメリカ追従一辺倒を改め、独自外交を進めるべきだと指摘する。

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 そもそも「クリミアの独立」「ロシアへの編入」を認めないという米欧の主張は矛盾だらけだ。
 
 クリミアは住民の58%がロシア系、24%がウクライナ系、12%がタタール系で、民族的なまとまりが悪い。

 歴史的にも非常に複雑だ。ここはゴート族、フン族、キエフ大公国、モンゴル帝国、タタール人、オスマントルコなど様々な民族と国が侵入したり占領したりした地域で、ナイチンゲールが活躍したクリミア戦争(1853~1956年)の主戦場になった。1954年にはウクライナ系ロシア人だったフルシチョフ第1書記が同地をロシア領からウクライナ領に編入した。当時はソビエト連邦の中での組み替えだったために大きな問題とはならなかったが、ソ連崩壊後には帰属を巡って争いとなり、当時もウクライナからの独立運動が起こっている。
 
 そして、クリミアのセバストポリにはロシア黒海艦隊の主要基地がある。もちろん「力による強奪」などではない。ロシアは1997年の協定でその海軍基地を20年使用できる権利を取得し、2010年には当時のヤヌコビッチ大統領との間で、ウクライナが滞納していたロシア産天然ガス料金を免除する見返りとして租借期間を25年延長する契約を結んだ。また、数百機の軍用機もクリミアの首都・シンフェロポリなどの空港に駐屯できることになっている。
 
 不法占拠でも何でもなく、日本が横須賀と横田を米軍に貸しているのと基本的には同じで、ロシアとウクライナ(とくにクリミア)は、軍事的にはアメリカと日本の関係と似たような間柄だったと言える。

 そうした経緯のあるクリミアで住民の大多数がロシア編入を望んだのに、米欧は認めないと叫んでいる。それこそが1つ目の矛盾だろう。米欧は、自らが2008年にコソボ独立を認めた経緯を思い出すべきだ。旧ユーゴスラビアのセルビアに属する自治州の1つだったコソボでは、セルビア系住民と独立を求めるアルバニア系住民の武力衝突が激化し、NATO(北大西洋条約機構)が軍事介入した。国連による暫定統治を経てコソボはアルバニア人で占める自治州議会がセルビアからの独立を宣言し、米欧はすぐに国家として承認した。
 
 それと今回のクリミアでは、論理的にどこが違うのか。なぜコソボ独立をすぐに認めながら、クリミア独立は認めないのか。
 
 さらに、米欧はロシアの動きを「侵略」と非難している。これが2つ目の矛盾だ。ウクライナでは首都キエフなどで極右勢力が、ウクライナ語を話せなかったりウクライナ国歌を歌えなかったりするロシア系住民に暴力をふるっていると繰り返し報じられていた。ロシアはそうした〝暴挙〟が続くようだと「看過できない」と警告してきた。
 
 アメリカも1983年にカリブ海の島国グレナダでクーデターが起きた際、グレナダにいたアメリカ人医学生らの安全確保を理由に軍事侵攻して制圧した。それとクリミアで、どこが違うのか。
 
 客観的に見て、米欧に大義名分はないと私は思う。しかし、ここで指摘したような論点が日本のマスコミには欠落している。「アメリカが好き」「ロシアが嫌い」ではなく、日本人はクリミア問題をもっと冷静かつ論理的に考えるべきだ。

※SAPIO2014年5月号

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