【著者に訊け】野地秩嘉 幻の豚追う『イベリコ豚を買いに』

NEWSポストセブン / 2014年4月16日 16時0分

【著者に訊け】野地秩嘉氏/『イベリコ豚を買いに』/小学館/1500円+税

 イベリコ豚というよりは、「人」に会いにゆく物語だ。思えば昨年話題を呼んだ例の「お・も・て・な・し」にしても、『サービスの達人たち』や『皿の上の人生』等、数々の著作を通じて、著者・野地秩嘉氏が真髄を伝えてきたのではなかったか。

 また2011年刊行の『TOKYOオリンピック物語』は、再びの東京五輪決定に沸く今こそ読まれるべきで、アジア初の五輪開催という一大事業をまさにゼロから成し遂げた人々の奮闘劇は、〈膨大なディテールの積み重ね〉こそが感動的だった。

 本書『イベリコ豚を買いに』でも、今や巷で大人気の超高級豚を、氏は「食う」や「書く」にとどまらず、丸々2頭「買って」しまう。しかも目的は〈ポークマーチャント〉、つまりイベリコ豚を買って売って、ビジネスを始めることにあった! 野地氏はこう語る。

「例えば沢木(耕太郎)さんの『一瞬の夏』。あれに近い冒険譚なのかなって自分では思うんですね。今まではわりと第三者的なノンフィクションを書いてきたんですが、この手の本はもっと僕自身が熱演しなきゃダメだと思って、それこそ〈わたし自身の行動が物語〉と言い切れるくらい、元手も時間もかかってます」

 端緒は2009年。秋田の酒場で供された〈イベリコ豚のメンチカツ〉だ。〈秋田のスナックでさえイベリコが出てくるのか〉〈イベリコ豚ってのは、そんなにたくさん飼われてる豚なのか〉

 聞けば〈どんぐりを食べる〉とかいうその豚をぜひ見てみたい→出発前の2010年4月に宮崎で口蹄疫が発生→取材を拒まれ、〈そうか〉〈買えばいいんだ〉と取材から購入に作戦変更→どうせ買うなら商品化できないか、というのが、野地氏が本書で辿る大筋の流れだ。

「結局、首都マドリードから南西へ約150kg行った放牧場『フィンカ・デ・カシージャス』を初めて訪れたのが2012年の1月、銀座の人気店『マルディグラ』の和知徹さんたちと開発した〈マルディグラハム〉の初出荷が昨年暮れで、秋田の一件からは実に5年がかり。

 あの時あっさり取材できていたら本にはしなかったと思うし、豚を買った以上はたとえ2頭でも〈継続的に〉買いたかった。それがレヒーノを始め、仕事相手に対する礼儀だと思ったので」

 同地でイベリコ豚専門の精肉会社を営むレヒーノが所有する放牧場は東京ディズニーリゾートの20倍。イベリア半島の南部に生息する樫の森に約600頭の豚が悠然と暮らし、冬に熟した樫の実を食べて育った純イベリカ種が〈ナッツ臭〉が珍重される最高級品〈ベジョータ〉だ。〈セボ(給餌する)〉と呼ばれる樫を食べていないイベリカ種や交雑種より出荷には時間がかかり、〈イベリコ豚のいいところは生産効率が非常に悪い〉ところと、レヒーノは笑う。

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