将棋の電王戦 現役タイトル保持者が出ぬ一因に新聞社の存在

NEWSポストセブン / 2014年4月25日 16時0分

 プロ棋士とコンピュータソフトが5対5の団体戦で戦う「電王戦」は、昨年の1勝3敗1分に続き、今年も1勝4敗と、人間側の劣勢が明確になってきた。人間側はもはや、「参りました」と頭を下げるしかないのか? 作家の大崎善生氏が「人間対コンピュータ」の裏側を綴る。

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 電王戦第五局の対局後、将棋連盟で全対局者とプログラマーを集めて記者会見が行われた。その席での発言に驚かされた。

 あるプログラマーはプロ側の1勝4敗という成績に、これは勝率2割なのでもはや平手の手合いではなく来年からはコンピュータ側が駒を落とすなり何らかのハンディを付けるべきだと言い始めたのである。プロ棋士に対してコンピュータが駒を落とすというのである。しかし現実の結果は間違いなく、将棋関係者は身を硬くして聞いているしかなかった。

 次に勝負に敗れたプロ棋士が、検討用の将棋盤駒を自由に使わせてもらい一手15分という持ち時間を貰えば私は絶対に負けないと言い出したのにも驚いた。

 棋士が対局にあたって他に検討用の盤駒を使わせろというのだから、では今までやり続けてきた頭の中で考え続ける将棋はいったいなんだったのだろう。そうすれば負けないという言葉は残念ながら、そうでなければ勝てないというふうに聞こえてならなかった。

(将棋ソフトの)ポナンザに敗れた大将格の屋敷伸之九段は、「負けたのは残念だが、自分の将棋は熱戦になったので満足している」と答えた。第一局に敗れた若手有望株の菅井竜也五段はソフトとの練習将棋では95勝97敗だったそうである。

 これからもコンピュータを使い成長していきたい、と答えたのは唯一の勝者となった豊島将之七段。若手の中でも抜けた存在で超有望株である。対戦前に貸し出されたコンピュータと300番近くも指して徹底的に弱点を探ったそうである。その勝利への執念が実を結んだ。

 コンピュータの実力はどのくらいだと思うかという新聞記者の質問に谷川浩司会長は表情を固くして「真ん中よりは上だと思う」と答えていたが、認識が甘いように聞こえてならない。現実に2年続けてA級九段が負かされているのである。私の知り合いの棋士二人は、A級とタイトルホルダーの中間ぐらいではないかと声を揃えていた。

 新聞記者は来年のメンバーをどうするのか、タイトルホルダーの登場はあるのか、とさらに谷川に迫った。それに対して「タイトルホルダーは連盟のものとは考えていない」という回答があり、私の頭は混乱した。おそらくスポンサーである新聞社との兼ね合いがあり連盟の一存では決められないということなのだろう。

 プログラマーたちからの発言もあり、ポナンザの山本一成氏は「人間にできることはすべてコンピュータにもできると思っている」と語った。将棋の結果はまさにその通りになったのだが、私はその言葉をまだ完全に納得できないでいる。

 第一戦に勝ち電王戦MVPを獲得した習甦のプログラマー竹内章氏は「コンピュータは人間を打ちのめすものではない。本来は手助けをするものです」と余裕の発言。確かにその通りなのだろう。

※週刊ポスト2014年5月2日号

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