高血圧治療「薬で血圧下げても長生きしない」との研究結果も

NEWSポストセブン / 2014年5月14日 7時0分

 血圧は一体、いくつまでセーフなのか──。4月に日本人間ドック学会が発表した新しい健康基準値では「上(収縮期血圧)147までが健康値」とされ、これまで専門学会が定めてきた「140以上は高血圧」の基準と違うため、大きな論争となっている。

 だが、血圧は上がりすぎるだけでなく、高血圧治療薬の副作用により下がりすぎても健康に弊害を及ぼすことは、あまり知らされていない。

 イギリスの研究グループは、高血圧治療薬を投与した実薬グループ8700人、偽薬(効き目のない偽の薬)を投与したグループ8654人を対象に、5年の期間をかけた大規模調査の結果を発表した(1985年)。

 注目されたのは死亡者の数だ。総死亡率は実薬グループ、偽薬グループで違いが見られなかった。つまり、「薬で血圧を下げても長生きしない」という結論である。

 高血圧症によって引き起こされる代表的な病気は脳卒中と心臓病。同研究では、総死亡のうち脳卒中と心筋梗塞による死亡者数もカウントされているが、脳卒中についても死亡率に差がなかった。しかし心筋梗塞による死亡数では、実薬グループで106人、偽薬グループ97人と、薬を飲んだグループのほうが逆に増えてしまったのである。

 理由としては、「高血圧薬の副作用」などが挙げられているが、薬の服用の一番の目的は長生きすることにあるため、薬を飲んでも寿命が延びない、むしろ病気のリスクを高めてしまうのなら意味などない。

「血圧を下げすぎるのにもリスクがある」というこの結果は、最新の調査によって次々に裏付けられている。

 アメリカのテネシー大学のグループは2005年から2012年までに65万人の慢性腎不全の人を対象に高血圧治療の効果を検証。血圧が高い人ほど死亡率が高かったのは順当だったが、上が130未満、下が70未満という「低血圧」のグループも同じように死亡率が上がるという現象が見られた。

 2006年には、アメリカの医師などを中心とした研究者グループが血圧と死亡原因の関係について、35万人を対象に25年間追跡した、空前のスケールの大規模調査を行なった。

 それによると、関係者の予想通り、高血圧による死亡原因の1位は、脳卒中や心血管障害だった。だが、意外だったのは血圧が高くなるにつれ、病気以外の原因で死亡する割合が増えたことだ。

 明らかに増加したのは転倒・転落、自動車事故、自殺などだ。同時に、これら事故などによる死亡率は、血圧が低すぎる場合でも上昇する傾向が見られたため研究者らを驚かせた。

 高血圧や高脂血症、糖尿病などの予防治療を専門とする医学博士で新潟大学名誉教授の岡田正彦氏が解説する。

「その理由として有力視されているのは、血圧が下がりすぎると、脳への血液量が減少し、めまいや立ちくらみなどを起こしやすくなる。また脳の神経細胞にも十分な酸素や栄養分が送られないため思考・判断能力の低下に繋がるといった、血圧が下がりすぎることによる心身へのダメージです」

※週刊ポスト2014年5月23日号

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