キリン「一番搾り」 若者は「何が一番なの?」と疑問を抱く

NEWSポストセブン / 2014年5月17日 16時0分

 今年に入り、アイドルグループ・嵐と役所広司が出演するCMやポスター、電車の吊り広告を繰り返し見かけた人は少なくないだろう。キリンは今、昨年の2倍もの広告宣伝費を投下して『一番搾り』に注力している。昨年末、大きくリニューアルされた『一番搾り』の何が“一番”なのかについて、ジャーナリストの永井隆氏が報告する。

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 今年3月で発売25年目を迎えたキリンの「一番搾り」は昨年末に大きくリニューアルされた。何が変わったのか。キリンビール滋賀工場醸造エネルギー担当部長の黒杭隆政氏(45)が解説する。

「リニューアルは、麦芽100%にした2009年に続く2度目です。仕込みと発酵過程を改良して渋みや雑味を低減させ、うまみを引き出しました。さらに、華やかな香りのホップの比率を高めています」

 味のリニューアルだけではない。消費者への訴求方法も大転換した。一番搾りのブランドマネージャーであるキリンビールマーケティング部の門田邦彦氏(43)が語る。

「一番搾りとは、麦汁の濾過(ろか)工程で一番初めに流れる麦汁だけを使った商品です。それによって“すっきりしてるのに、うまみも充分”という特徴が出てきます。

 しかし調査したところ、一番搾りの意味が消費者の皆さんに伝わっていなかったのです。愕然としました。ビール好きのある程度の年齢の方は知っているが、若い世代を中心に『何が“一番”なの?』という人が多かった。当然知っているはずだという我々メーカーのおごり、あるいは怠慢があったのかもしれません」

 そこで始めたのが、イオンなどショッピングモールや大型スーパー、量販店の店頭で展開する「ブランドセミナー」だ。店を訪れた客を呼び込み、一番搾り製法のこだわりを伝えていく。

 人気なのは濃い琥珀色の一番麦汁と薄めの色の二番麦汁の飲み比べ体験。比べれば見た目も味も香りも明らかに違うことに多くの客が驚く。

「一方的にこだわりを伝えようと思っても伝わらない時代だと思います。逆に、麦汁飲み比べのような“体験”をすれば、お客様がSNSや口コミなどでどんどん情報を広めてくれる」(門田氏)

 セミナーは3月末までに200店舗で実施、約1万5000人が参加した。年内に1200店舗、10万人を目指す。

 黒杭氏が勤める滋賀工場では流通担当者向けの工場見学を実施する一方、工場従業員が酒販売り場に立ってサンプリングなどを行ない、一般客に商品を説明しているという。  テレビCMでも「一番」の意味と価値をもう一度、消費者に伝えようとしている。

 そうした甲斐あり、今年1~3月、一番搾りの販売量は前年比9.1%増となった。特に缶では約3割の大幅増。キリンのビール類全体の出荷量は6.1%増だ。

 消費増税の駆け込み需要を考慮しても「好調」(広報担当)というが、1~3月ではビール類出荷量のシェアを落としていることも見逃すわけにはいかない(前年比1.2%減)。他社が新製品を投入して出荷量を増やしたことが背景にある。ライバルとの戦いがますます激化することは間違いない。

※SAPIO2014年6月号

NEWSポストセブン

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