集団的自衛権行使なら事実上の「日韓軍事同盟」が成立する

NEWSポストセブン / 2014年6月1日 7時0分

 集団的自衛権に関する説明を安倍晋三首相は熱心に行なっているが、首相が隠す本当の集団的自衛権行使とはどういうケースなのか。「朝鮮半島有事」を、防衛専門家たちの協力をもとにシミュレーションしてみよう。

 長く休戦状態だった朝鮮戦争が再開されたとする。北朝鮮が休戦協定の破棄を通告し、自動的に韓国、米国と戦闘状態に入ったのだ。
 
「憲法解釈の変更が行なわれた場合、日本には米国との集団的自衛権が発生するので、米国を守る形で、自衛隊が韓国に協力することになるだろう」
 
 と語るのは元航空自衛官で軍事評論家の潮匡人氏だ。
 
「朝鮮半島有事で自衛隊が担うことになるのは、『米輸送艦の防護』でしょう。北朝鮮が空軍機で攻撃してくる可能性もあるため、空自のF15でもエスコートする。米空軍のF15と同じ能力があるので、協力を求められることになるはずです」
 
 米軍が北朝鮮の基地を空爆する際にも、F15が護衛を求められることもあり得る。それだけではない。
 
「おそらく米軍が自衛隊に最も期待しているのは、海自のP3C(対潜哨戒機)による北朝鮮の潜水艦に対する哨戒。対ソ連用に米国から大量に購入させられたP3Cがありますからね。地上基地の空爆ではレーダーサイトの情報も米軍に提供することになる」(潮氏)
 
 日本海での「臨検活動」も、海自が担うことになりそうだ。
 
「臨検というのは怪しい船を止めて立ち入り検査を行なうものです。停船を求め、『応じなければ撃つ』と警告。それでも停船しなければ、実際に撃つ。今の海自は『撃つ』と通告はできるが撃てないので、事実上、臨検はできない。

 だが、集団的自衛権によって武器使用が可能になれば、海自は臨検を行なうことができる。米軍や豪州軍、韓国軍などと共同で、定められた海域を担当します。北朝鮮やその友好国の船は燃料や武器弾薬を運ぶため、臨検すれば当然、応戦してきて戦闘になる。他のエリアで戦闘になれば、そこに駆けつけることにもなるだろう」(潮氏)

 一方、小泉内閣で内閣官房副長官補として自衛隊のイラク派遣を担当した安全保障法制のプロ、柳澤協二・国際地政学研究所理事長は「護衛の必要はない」という。
 
「1997年に結ばれた日米防衛協力ガイドラインは、“わが国の近隣で有事が発生した際の米艦護衛はしなくてもいい”という前提でつくられています。にもかかわらず、自衛隊が米軍の艦船や爆撃機の護衛をすれば、北朝鮮から“参戦した”とみなされ、攻撃されるリスクが高まります」
 
 集団的自衛権がなければ、朝鮮半島有事に参加できず、北朝鮮は日本を攻撃する大義名分がない。だが、集団的自衛権を行使し、米軍に協力すれば日本はれっきとした戦争当事国となり、北朝鮮が“敵国”である日本にミサイルを撃ち込んでくる可能性は高くなる。
 
 そうなれば、韓国国民を守るために、米韓軍を支援する自衛隊員にも、北のミサイル攻撃を受ける日本の一般市民にも、多くの犠牲者が出る可能性が高い。日米同盟というより事実上の日韓軍事同盟だが、果たして、現在の韓国との間に日本がそれだけの犠牲を払ってまで戦争に参加しなければならない信頼関係があるだろうか。

※週刊ポスト2014年6月6日号

NEWSポストセブン

トピックスRSS

ランキング