妖怪ウォッチ&花子とアン効果で甲州弁「~ズラ」が全国区に

NEWSポストセブン / 2014年6月1日 7時0分

 最近、子どもたちが奇妙な話し方をしている。「たまげたズラ」「こわいズラ~」「すんげぇズラ」など耳慣れない訛りで話しているのだ。この口調は、子どもに大人気の『妖怪ウォッチ』に登場する田舎から出てきた狛犬の妖怪「コマさん」の口まね。そして文末の「ズラ」は静岡、山梨、長野の方言でもある。山梨の甲州弁は数年前にバラエティ番組の企画「ブサイク方言選手権」で1位になったこともあるが、子どもたちにとって「ズラ」はカワイイものらしい。

『「方言コスプレ」の時代 ニセ関西弁から龍馬語まで』の著者で、日本大学文理学部で方言・社会言語学を教える田中ゆかり教授によれば、子どもたちが大人からは奇妙に聞こえる方言などの口まねを喜んですることそのものは、過去にも多く見られたという。

「古くは1975年に栄養ドリンク『新グロモント』のテレビCMで流れた秋田方言『ちかれたびー』が大流行し、子どもたちが盛んに真似をするということがありました。漫画やアニメの人気キャラクターが話す「方言」を子どもたちが真似ることそのものは、とくに珍しいことではありません。ただ、中部方言キャラそのものが珍しいので、中部方言が子どもたちの人気になっているという現象は、新しいですね」

 過去にマンガやアニメで中部地方の方言が使用された例としては、1972年に漫画連載が始まった『ドカベン』の殿馬一人がコマさんと同じく「ズラ」を使い、1980年代には『Dr.スランプ』のニコちゃん大王は宇宙人なのに愛知県東部の三河弁を話した。1995年まで漫画連載が続いた『ドラゴンボール』の主人公、孫悟空も名古屋弁を使っているが、主な使用例はこのくらいであまり多くない。

「マンガの登場人物が話す方言にはどこのものが多いか調べたことがあります。その結果からは、方言キャラは、関西、九州が多く、中部地方は非常に少ないという結果になりました。同じように、近代文学に現れる方言としても、やはり中部地方は珍しい部類です。

 マンガや小説などに登場する中部方言キャラは従来それほど多くなかったので、まだ特定のイメージがついていない新鮮な方言ということができます。中部方言キャラのコマさんは、そういう意味で新鮮なキャラとして受けとめられているのではないでしょうか」(前出・田中さん)

 1960年代にほぼ全世帯にテレビが普及したことで共通語が全国に広まり、直すべきものとされていた方言の価値が1980年代以降は逆に高まった。今では面白みを表現するために出身でもないのに関西弁を使い、男らしさを表現するために縁もゆかりもない土佐や広島、九州方言に聞こえる口調を真似る言葉遣いを多くの人が体験している。

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
NEWSポストセブン

トピックスRSS

ランキング