中越衝突きっかけに関心強める米軍が南シナ海で駆逐艦を航行

NEWSポストセブン / 2014年6月20日 16時0分

 南シナ海で中国とベトナムが衝突して以来、アジアの安全保障への関心が高まっている。国際教養大学教授でチャイナウォッチャーとして知られるウィリー・ラム氏が中越艦船衝突をきっかけに、今後は各国がどのように行動する見込みかについて解説する。

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 南シナ海での中越艦船衝突を引き金に、ベトナムでは激しい反中暴動が発生し、中国のみならず台湾や香港、日本の現地進出企業が放火、破壊され、多数の死傷者が出た。北京の軍事筋によると、中国人民解放軍はベトナム国境に駐留する軍部隊数十万人に「3級警備態勢」をとるよう指示したという。

 これにより将兵の休暇を取り消し、24時間態勢で警戒に入り、即応準備を整えることが求められる。つまり臨戦態勢に入ったことを意味する。

 台湾海軍の元陸戦隊上校(大佐に相当)で、台湾版「防衛白書」の執筆者でもある宋兆文氏は台湾メディアに対して、「中越間では1974年や1988年にも両軍艦船による衝突が起きており、今後も紛争が起きる危険がある。一昨年6月、中国はベトナムが主権を主張する海域に海南省管轄下の三沙市を一方的に設立するなど、これまでベトナム側がやられっぱなしだけに、不満が爆発する可能性は否定できない」と指摘し、大規模な海戦に発展する恐れを指摘した。

 しかし、中越両国の軍事力の差は歴然としている。中国の陸軍と海軍の戦力は125万人(戦車と装甲車は1万5000輌)と26万人(各種艦船800隻)であるのに対して、ベトナム軍は陸軍が42万3000人(同2700輌)、海軍は4万2000人(同250隻)と圧倒的に不利だ。

 ベトナムが最後に頼るのは南シナ海に展開する米国の軍事力になる。

 反中暴動のさなか、折しも米国を訪問中だった中国軍の房峰輝・総参謀長は米軍制服組トップであるデンプシー統合参謀本部議長と会談。米側が中越艦船衝突の直接の原因となった中国側の石油採掘について、「地域の平和と安定を損なう挑発的な行為は慎むべきだ」と批判すると、房氏は「中国の領海内での行動であり、何ら批判される理由はない」と激しく反発した。

 米太平洋軍第7艦隊司令部は、米軍は南シナ海の事態に強い関心を持って見守っており、「毎日、偵察機で情勢を把握しているほか、揚陸指揮艦ブルー・リッジと駆逐艦が南シナ海を航行している」としている。

 今後、中国軍がどのような動きを見せるかは未知数だが、常国防相や房総参謀長の発言からも分かるように、妥協する姿勢は見えず、最終的な判断は軍を統率する習近平・国家主席が下すことになる。習氏が軍トップに就任してまだ1年あまり。軍権を掌握しているとは言い難いだけに、ここで強硬姿勢を見せて軍に自らのリーダーシップを誇示したいと考える可能性もある。

 その際、米軍がどのように行動するか。“尖閣有事”を占う大きな試金石になるのは間違いない。

■翻訳・構成 相馬勝(ジャーナリスト)

※SAPIO2014年7月号

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