【書評】「鉄道とは何か?」を考えるときに信頼できる学問書

NEWSポストセブン / 2014年6月10日 7時0分

【書評】『鉄道政策 鉄道への公的関与について』/盛山正仁著/創英社/三省堂書店/2800円+税

【評者】山内昌之(明治大学特任教授)

 明治以来、日本の鉄道は国の近代化と産業化に大きく貢献してきた。いまでも、民営鉄道には国の助成が出されている。この書物は、鉄道への公的関与の在り方を論じているが、内外の豊富な実例やカラーによる各種鉄道車両の紹介などによって、読みやすくする工夫も随所にこらされている。

 本書を読んで、カイロに住んだ時に私も毎日のように乗っていたトロリーバスが無軌条電車といい、鉄道車両に区分されることを知って驚いた。札幌の地下鉄や東京のゆりかもめが鉄輪と線路でなくコンクリートの走行路をゴムタイヤで走ることを訝しく思っていたが、これも案内軌条式鉄道というそうだ。とにかく、鉄道マニアや「撮り鉄」の皆さんが“鉄道とは何か”と考えるときに信頼できる書物といえよう。

 レトロ風の池上線や世田谷線でも知られた東急が、渋谷駅をターミナルとせずに東京メトロ副都心線に乗り入れた事業の背景や理由も分かりやすく解き明かされる。これは、利用者の利便向上を求めた運輸省に対して、工事や再開発を含めて鉄道事業以外の収益増加を期待する東急が応じたからだというのだ。

 国鉄民営化後も、JR北海道とJR四国は経営が厳しい。国が特別債券の発行によって二社の経営安定を試みるのは、地域経済への影響や公共交通機関の確保などを考えた結果らしい。国が唯一の株主なので、税金を投入してJR九州を含めた三島のJR会社の経営を支えているが、著者は鉄道運行の支援について原則を検討すべきだと冷静に提言する。

 本書は、神戸の各種鉄道を乗り換えで使用する場合の料金と、トンネル代やガソリン代を含めたマイカーの支出を比べて自動車に軍配を上げるなど、鉄道にも不都合なデータを公平に出している。著者は、鉄道整備と総合交通体系に関わる専門的な本書を衆院議員落選中に準備し、法務大臣政務官になってから完成したというから驚きではないか。

※週刊ポスト2014年6月20日号

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