【著者に訊け】香山リカ氏 最新刊『劣化する日本人』を語る

NEWSポストセブン / 2014年9月7日 7時0分

【著者に訊け】香山リカ氏/『劣化する日本人 自分のことしか考えられない人たち』/ベスト新書/759円+税

『劣化する日本人』というからには、比較対象が当然ある。香山リカ氏は言う。

「例えば2007年に『なぜ日本人は劣化したか』を書いた時も、食品や耐震偽装問題の頻発が私には凄く衝撃的だったんですね。真面目で几帳面、自分を犠牲にしてでも他人のためを思うのが、従来の日本人像でしたから。しかも最近の劣化はまた質が違う。小保方氏や佐村河内氏の事件でも、一言で言えば〈肥大する自己愛〉が、真犯人ではないかと…」

 理化学研究所・小保方晴子氏らによる「STAP細胞問題」や佐村河内守氏の「偽ベートーヴェン問題」。片山祐輔被告の「パソコン遠隔操作事件」や〈止まらないヘイトスピーチ〉等も俎上にのせつつ、本書では各々の深層を具に検証する。

 むろん個人攻撃ではない。例えば小保方事件に関する〈自己愛性パーソナリティ障害〉等の診断もあくまで社会を蝕む病理として下され、背後にあるSNSへの依存や〈知性の劣化〉にこそ氏は警鐘を鳴らす。彼らは決して〈突発的に生まれたモンスター〉ではないと。

 表題の「劣化」に関して、興味深いエピソードがあとがきにある。香山氏はとある友人に本書の題名を口にするなり、こう釘を刺されるのだ。〈そんなタイトルじゃ“反日的”とまた叩かれるだけだよ。だいたいいまの売れ筋の正反対だし…〉

「要するに今は中国や韓国を批判するか、海外の人が日本の素晴らしさを讃えたものがウケるらしい。確かにその手の本や番組が最近多い気もするし、私なんてネトウヨの人からは北の工作員扱いです(笑い)。

 もちろん自分や生まれた国のことは肯定していい。でも少しでもうまくいかなくなると〈こんなはずじゃなかった〉と極端に針が振れて、簡単にバレる嘘をついたり他人を貶めて満足しようとする人が、実は診療現場でも増えてるんですね。

 最近は患者さんも二極化していて、明日の生活にも困るほど貧しくて孤立する人が増える一方、恵まれているからこそ『私はもっと輝いていい』と訴える人も多い。たぶん鬱病が増えたのも日本企業に成果主義が導入された21世紀以降で、目立たないのは悪いことだ、地道に働くなんてつまらないという空気に、日本中が覆われてしまったんです」

 先述した自己愛性パーソナリティ障害や〈演技性パーソナリティ障害〉等々、本書では過剰な自己演出によって自己愛の不全を埋めようとする心理のからくりを、まずは医学的・客観的に検証する。

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