大正の大衆が熱狂した「源義経=ジンギスカン」の奇想天外説

NEWSポストセブン / 2014年11月13日 7時0分

「日本人は古代ユダヤ人の末裔である」「源義経は大陸でジンギスカンになった」日本人のルーツに関わる奇想天外な言説は数多い。『偽史冒険世界』などの著書がある長山靖生氏が解説する。

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 東北で自害したはずの源義経が生き延びて秘かに蝦夷地に渡りアイヌ王と崇められ、さらに大陸で蒙古の騎馬民族の支配者となり、中国に攻め入る現在もよく知られる「義経=ジンギスカン説」である。”義経不死伝説”は江戸や明治期にも戯作などを通じて流布されたが、現在まで広く知られる説は大正13(1924)年刊行の『成吉思汗ハ源義経也』が嚆矢だった。

 著者の北海道アイヌ虻田学園創始者・小谷部全一郎が自説の根拠として挙げたのは、ジンギスカンの幼名「テムジン」は「天神」、父の名「エゾカイ」は「蝦夷海」に由来するなど、日本語と蒙古語の語呂合わせが大半だった。いかにもトンデモだが、大衆は熱狂して大ベストセラーに。

 大正デモクラシーと軍国主義が拮抗した当時、この「物語」は日本人の偉大さを示すと共に中国大陸進出の大義名分となった。小谷部によれば清朝を開いた北方の騎馬民族もかつて元帝国を築いたジンギスカン=義経の子孫であり、日本が清朝に進出するのは、兄弟が再び一つになるための戦いなのだ、と大東亜共栄圏構想に「歴史的権利」という正当性を与えた。

※SAPIO2014年12月号

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