スコットランド独立問題に大前氏 「独立した方が良かった」

NEWSポストセブン / 2014年11月14日 7時0分

 ウクライナ問題、イスラム国、香港デモ。世界の地殻変動の底流にあるのは、「国家とは何か?」という問いにほかならない。国家の定義を揺るがせたスコットランドの独立投票は否決に終わったが、大前研一氏はこの結果に疑問を呈する。

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 世界の耳目を集めたイギリスからの独立の是非を問うスコットランドの住民投票(9月18日)は、反対55.3%、賛成44.7%で否決された。しかし、その差はわずか38万3937票。独立賛成派が勝つチャンスは大いにあったし、私は独立したほうがよかったと思う。

 その理由は、まず、スコットランドはトニー・ブレア元首相やゴードン・ブラウン前首相を輩出したことでもわかるように、イギリスの中でも人材が非常に優秀なことだ。国家の盛衰は、最後は人材で決まる。スコットランドは独立すれば、かなり強い国になり、EUに加盟しても立派にやっていけるだろう。イギリスがポンドを使わせないと言っていた通貨の問題も、どうということはない。勝手に使ってしまえばよいのだ。

 世界中で発行国の許可なく他国の通貨を使っている国はたくさんある。たとえば米ドルは、中南米をはじめ多くの国で実質的に流通している。それをアメリカが止められないのと同様に、スコットランドがポンドを使ってもイギリスは座視するしかない。

 さらに、もし独立して苦境に陥ったら、アメリカにいるスコットランド系の人たちが資金提供や企業進出などで支援するに違いない。北アイルランドの独立運動を資金面でサポートしてきたのは北アイルランド出身のアメリカ人だが、それと同じようにスコットランド出身のアメリカ人が“母国”を助けるはずだ。

 独立運動が頓挫したのは、それを指揮していたスコットランド自治政府のアレックス・サモンド首相(スコットランド民族党党首)の作戦ミスである。独立気運を少し早く煽りすぎた。というのも、住民投票9日前に発表された世論調査で独立反対と賛成が拮抗したり、賛成が反対を上回ったりする結果が出てしまったからだ。

 このためイギリス政府が危機感を強め、デービッド・キャメロン首相(保守党党首)、ニック・クレッグ副首相(自由民主党党首)、労働党のエドワード・ミリバンド党首、さらには前述したスコットランド出身のブラウン前首相が急遽、相次ぎ現地入りしてイギリス残留を呼びかけるとともに、残留が決まったら自治権を大幅に拡大するという約束をバーゲンセールのごとく大盤振る舞いした。

 そのかいあって、そこまで自由にやらせてくれるのなら、あえて前途多難な独立の道を歩む必要はないと考える住民が増えて流れが反転してしまった。あの世論調査で、まだ反対が賛成を10%くらい上回っていれば、安心した反対派が投票に行かなかったり、まだ賛否を決めていなかった人たちが賛成に回ったりして、独立が可決されていた可能性が高かっただろう。

※SAPIO2014年12月号

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