がん治療 医者から「新しい薬を試してみましょう」は要注意

NEWSポストセブン / 2014年11月16日 7時0分

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抗がん剤について解説する近藤誠医師

 抗がん剤を、がん治療の救世主のように思われている人も多いだろう。抗がん剤は、人体の細胞を攻撃することでがん細胞を弱らせる薬物である。脱毛や吐き気などの副作用が出るのは、それががん細胞だけでなく、正常細胞も同じように攻撃してしまうからである。そこで近年は、がん細胞増殖に関わるタンパク質だけを狙い打ちする「分子標的薬」と呼ばれる抗がん剤が増えている。

 ところが、先日『がんより怖いがん治療』(小学館刊)を上梓した元慶應大学病院のがん治療医、近藤誠氏によると、分子標的薬(がん細胞などの表面にあるたんぱく質や遺伝子をターゲットとして効率よく攻撃する薬)も含めた抗がん剤は、「急性白血病、悪性リンパ腫、小児腫瘍、睾丸腫瘍、子宮絨毛がんは抗がん剤で治る可能性があるが、それ以外のがんには無意味」というのだ。

 つまり、胃がん、肺がん、食道がん,乳がんなどの固形がんには、まったくと言っていいほど効かないというのだ。なぜ効かないのか。有効性を確認する臨床試験を経て認可されているはずではないのだろうか。

 近藤氏は、その臨床試験における新抗がん剤の「有効」基準そのものが低レベルすぎると言う。同書によると、抗がん剤が「有効」とされる指標は以下の3つ。

【1】がんの大きさが3分の2になる。
【2】その縮小が、1か月持続した。
【3】上記の1と2の該当者が全被験者の10パーセントから20パーセント。

 つまり、医者の言う「抗がん剤が有効」というのは、患者の寿命が延びることではなく、がんが消えることでも、ましてや治ることでもない。たとえば100人の胃がん患者がいたとして、10人から20人のがん腫瘍の大きさが3分の2以下になり、それが1か月持続しただけということだ。たとえ被験者が2か月目に亡くなっても、他の8割方の患者に何の効果がみられなくても、その薬は有効のまま。ということは、大部分の患者にとって、効果は期待できないことになる。近藤氏は説明する。

「この試験の目的は、新薬に効果があるかどうかと、副作用の出方を見る、それだけです。本来なら、新薬を使った患者グループと、使わなかった患者グループに分けて比較試験を行うべきです。薬を使った患者グループの治療成績のほうがよければ、有効と判断する根拠になる。ところが日本では、そうした試験は行わずに、厚生労働省は認可してしまうのです」

 抗がん剤が一部にしか効かないことを認めるがん専門医は、近藤氏だけではない。問題は、「有効」の中身がこれほど頼りないものであることが、あまり世間に知られていないことだろう。近藤氏は抗がん剤の臨床試験を、患者に不利益を与えるだけの人体実験として強く批判している。

「治る見込みのない患者さんを実験台にするんですね。医者から1パーセントでも治る望みがあると言われれば、多くの患者さんは臨床試験を受けようと思うでしょう。しかしどんな抗がん剤にも、副作用はあります。ほとんどの患者さんにとって、苦しみを増やすだけですよ。患者さんには穏やかに余生を暮らす権利があるはずです。

 臨床試験は、数多くの病院で行われています。抗がん剤を開発したい製薬メーカーと、製薬メーカーから研究費を獲得したい病院側の思惑が合致して、たくさんの患者さんが実験台にされています。医者から新しい薬を使いましょう、と言われたら注意してください」

 抗がん剤が効くのは、一部のがん。これだけは覚えておきたい。

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