若き名匠の深夜ドラマに絶賛の声 テレビ解説者が魅力を語る

NEWSポストセブン / 2015年11月22日 7時0分

写真

『おかしの家』にはオダギリジョー、八千草薫、尾野真千子らが出演(公式HPより)

 今期のドラマでは朝の枠では『あさが来た』(NHK)が、プライムタイムでは『下町ロケット』(TBS系)が好調だが、深夜帯でもにわかに注目を集めているドラマがある。石井裕也氏が監督を務め、オダギリジョーが主演している『おかしの家』(TBS・毎週水曜午後11時53分~)がそれだ。毎クール、すべてのドラマをチェックしているテレビ解説者の木村隆志さんは「今期No.1の傑作」と絶賛する。その魅力について木村さんが解説する。

 * * *
 私自身、さまざまな媒体で今期の最注目作に挙げていましたが、ドラマのレビューサイトやTwitterなどでも絶賛の声が相次いでいます。当作は、両親を早くに亡くした主人公・太郎が、祖母の駄菓子屋『さくらや』を守ろうと奮闘するほか、幼なじみたちとの交流を描いた心温まる物語。その魅力は、ノスタルジーとスタイリッシュを併せ持つ映像美、何気ない会話の中に夢や過去などの大きなテーマが潜むストーリー、オダギリジョーさんや勝地涼さんらハマリ役ぞろいの俳優など、多くあります。

 当作を見て「映画のようだな」という感想を持った人が多いようですが、それは正解。脚本・演出を手がける石井裕也さんは、『川の底からこんにちは』でブルーリボン賞監督賞を当時28歳で最年少受賞し、『舟を編む』で米アカデミー賞外国語映画部門の日本代表に選ばれたほか、日本アカデミー賞でも最優秀監督賞を受賞した若手屈指の映画監督です。その意味では、まさに「お金を払ってわざわざ見に行く」ような贅沢な品質の連ドラと言えるでしょう。ちなみに石井監督の妻は、若き名女優・満島ひかりさん。繊細な脚本・演出の石井さんと、繊細な演技の満島さんが引かれ合うのも、どこか納得してしまいます。

 当作は深夜ドラマであり、大事件や過剰な演技も伏線もないだけに、何も考えずボーッと見ることもできますが、それだけではもったいないと思います。たとえば、登場人物たちに自分を重ねて見ると……小学生のときにからかってしまったあの子を思い出し、成功した友人を素直に祝福できない自分を実感し、おばあちゃんとの会話に涙腺がゆるむなど、過去の記憶や現在の葛藤に思いをはせてみてはいかがでしょうか。

 また、エンディングで流れるRCサクセションの名曲『空がまた暗くなる』も印象的で、忌野清志郎さんの歌う“大人だろ、勇気を出せよ”というメッセージに、心の内側をそっとくすぐられます。それら全てに渡って、「泣かせようとは思わない。感動させようとも思っていない。そうするかどうかは、あなた次第ですよ」。そんな石井監督の声が聞こえてくる気がしますし、見る人の心を映す鏡のような、感受性の豊かさを試される作品ではないかと感じています。

 ちなみにこのドラマは「原作協力」の書籍こそあるものの、キャラクター設定や各話の筋書きは全く異なるものであり、事実上オリジナル脚本と言っていいでしょう。悪人がたくさん出て来て、それを主人公が懲らしめて溜飲を下げる。あるいは、“壁ドン”や露出の激しいベッドシーンを連発する。そんな分かりやすさ重視のドラマが主流の中、『おかしの家』のような視聴者の思考回路を動かすオリジナル作品が増えることを願ってやみません。

【木村隆志】
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』(TAC出版)など。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング