栗山監督の「人たらし戦略」は豊臣秀吉、加藤清正に学んだ

NEWSポストセブン / 2017年2月2日 16時0分

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名将は歴史から何を学んだのか

 コーチ経験がない栗山英樹氏が、北海道日本ハムファイターズの監督に就任すると伝えられたとき、多くの人はその采配に懐疑的な予測をしたのではないだろうか。ところが、大谷翔平を投手と打者の二刀流で起用し続け、昨シーズンは大量ゲーム差を逆転してリーグ優勝、チームを日本一へ導く名将ぶりをみせた。

 野球以外の歴史を作った人たちから知恵をもらっているという栗山監督と、本誌連載「逆説の日本史」著者の作家・井沢元彦氏による対談から、栗山監督が歴史から学んだ戦略について紹介する。

井沢元彦(以下、井沢):失礼ですが、コーチの経験はゼロですよね? それなのに名指揮官になれるものなんですか。

栗山英樹(以下、栗山):いや、僕は何もしていないんです。人を生かして、一人一人がキラキラしたら絶対に勝つはずだと。だから、相当な部分をコーチや選手に任せています。よく選手に「監督は言いたいことを我慢してますね」と言われますが、僕が何か言ったら、それをやらないと使ってもらえなくなると選手が思って萎縮してしまうでしょう。

井沢:監督に迎合してしまうこともある。

栗山:自分で気づいて、自分でやる人になってほしいんです。翔平なんか見てると、自分で勝手にうまくなっている。一流選手ってそういうものだと思うんです。コーチにも伝えているのですが、チームのことはどうでもいいから、選手のためになるかならないかを判断基準にしようと。

井沢:普通は逆で、「チームのために選手が役立つかどうか」を考えそうですが。

栗山:こっちが選手のために何でもやってやるという思いがあると、選手もチームのためにやってやる気になると思うんです。それが一番勝ちに近づく方法だと考えています。それこそ「人たらし」と呼ばれた豊臣秀吉や加藤清正(豊臣秀吉の家臣)はこんなふうに振る舞っていたんじゃないか──なんてことを本を読んでは参考にしています。

井沢:監督は選手を下の名前で呼びますよね。それも人たらしの戦略ですか?

栗山:はい、そうですね。プロ野球って監督と選手の距離感がまだまだ遠い。近づきすぎない程度で、選手が遠慮せずに自分を出せるようにしたいんです。

井沢:去年はペナントは大逆転で優勝し、CSや日本シリーズでもその采配が絶賛されました。短期の戦い方と長期の戦い方をどのように分けているんですか。

栗山:フロントと監督、そして選手との間では、考える時間軸が違うんですね。監督というのは1年から3年間ぐらい先のチームづくりまで考えているイメージがあるんですが、フロントはさらに5年、10年先を見ている。

 でも選手は今日の試合を勝つために必死になる。そういうさまざまな価値観があるんですが、僕は選手たちと同じく、今日勝たなかったら明日はない、余力を残さない勝ち方しかできないんです。お客さんも入っていますからね。

井沢:プロ野球はエンターテインメントでもあると。

栗山:はい。これだけ金をもらっていて、全試合に全力を尽くさないなんてあり得ない。去年は中島卓也と田中賢介の二遊間をフル稼働させた結果、シーズン終盤は2人とも調子を落としてしまった。でも、僕は他の選手が出るよりもこの2人のほうが絶対勝ちに近づくと思ったから使い続けたんですね。そのあたりは今日の勝ちしか考えられない僕の反省点でもありますが。

※週刊ポスト2017年2月10日号

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