日本は中国の4分の1の国力を確保すれば十分に対抗できる

NEWSポストセブン / 2018年2月18日 7時0分

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トランプは南シナ海を中国に差し出した可能性がある The New York Times/AFLO

 日本人はいつまでも米国が守ってくれると思い込んでいるのではないか。しかし、現実を直視する必要がある。米中は急激に接近し、両国の新型大国関係は事実上始まっている。むしろ米国から見放される可能性もあるのだ。京都大学名誉教授の中西輝政氏が警鐘を鳴らす。

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 2016年11月、安倍首相は世界の首脳で最も早く大統領選に勝利したばかりのトランプに会いに行った。以降も「トランプべったり」の個人外交を繰り返している。

 だが、昨年5月にドイツのメルケル首相が「欧州が他国に完全に頼ることができる時代はある程度終わった」と宣言するなど、欧州、中南米、カナダなどで“トランプ離れ”が進む。

 北朝鮮の核危機に目を奪われるあまり、日本だけが世界的な地殻変動を見逃しているのだ。確かに中国、北朝鮮という地政学的リスクを抱える日本が米国を頼るのは当面は合理的な選択だが、いったん有事になった時、本当に米国は当てになるのだろうか。

 歴史を振り返ると、米国は何度も同盟相手を見捨ててきた。第二次大戦時では日本と戦う中華民国を支援したが、蒋介石が国共内戦で毛沢東の共産党軍の攻撃を受けると、米国は援助を打ち切り蒋介石を見捨てた。

 また、冷戦時に南ベトナムやハンガリー、チェコが共産勢力と対峙した際も共産主義からの「解放」を訴えて支援を仄めかしたが、最後は見捨てた。建国以来、孤立主義の伝統がある米国には、「わが国が安全ならば、世界の正義と民主主義は生き延びる」との本能的な独善主義がある。日本に対しても同様だ。

 昨年2月、マティス国防長官が尖閣諸島について「日米安保条約の適用対象」と発言すると、日本のメディアは欣喜雀躍した。だが平時の抑止を目的とする安保条約には“逃げ道”が多い。

 たとえば第5条では米国が日本を守るのはわが国の「施政下にある領域」に対する武力攻撃が発生した場合と定められており、仮に中国の武装漁民が尖閣に上陸して中国国旗を立て、実効支配を宣言すれば、「もはや日本の施政下にない」という理屈で安保の適用外とすることも可能だ。

 しかも金融市場開放に象徴される米中接近により、米国が中国と正面衝突する可能性はますます低くなった。米中の間で大きなパワー・シフト(力関係の変化)が進む今日、何より重要なのは、同盟国に安全保障を委ねるのではなく、自国の生存は自国で確保することを大方針とすることだ。

 内外に多くの敵や弱点を持つ中国に対しては、いかに巨大とはいえ、その四分の一の国力を確保すれば日本は十分に対抗できる。これは私の持論である「対中四分の一戦略」だ。

 日本は経済を再生して財政を再建し、軍事、技術、情報など総合的な国力を蓄え、国難に独立独歩で対処する国づくりを今すぐ始めねばならない。

■なかにし・てるまさ/1947年大阪生まれ。京都大学卒業。ケンブリッジ大学大学院修了。京都大学大学院教授を経て、現職。近著に『アメリカ帝国衰亡論・序説』(幻冬舎)、『日本の「世界史的立場」を取り戻す』(祥伝社、共著)がある。

●取材・構成/池田道大(フリーライター)

※SAPIO2018年1・2月号

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