ハリル電撃解任を仕掛けた更迭直訴状と“リエージュの夜闘”

NEWSポストセブン / 2018年4月17日 7時0分

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W杯まであと2か月という時期になぜ?(時事通信フォト)

 サッカーW杯イヤーの監督解任は過去にも複数例があるが、いずれも良い結果を残せていない。ロシア大会本番2か月前の指揮官交代は世界でも例がない。解任の理由は実に抽象的だった。とりわけ「ロジカル(論理的)な判断」が口癖の指揮官にしてみれば、理解不能に聞こえたに違いない。

「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、4月9日の緊急記者会見でヴァヒド・ハリルホジッチ監督解任の理由をそう説明した。しかし、それ以上の具体的な理由を挙げることはなく、関係が薄れた選手が誰だったかも明言しなかった。異例の更迭劇の裏では選手と監督、そして協会の三つ巴の“攻防戦”が繰り広げられていた。

 3月のベルギー遠征時、1-1で何とか引き分けたマリ戦(23日・リエージュ)の夜──。

 W杯不出場国相手にドローに持ち込むのが精一杯だったことに危機感を覚えた選手たちは、その日の夜、戦術を修正するためのミーティングをハリル監督に訴えた。この遠征では代表歴が浅い選手も多く招集されていたため、ミーティングには選手間の理解を深めるという狙いもあった。

“建設的な提案”だけに選手たちは当然了承されるものと思っていた。ところが、指揮官は首を縦に振らなかった。

 マリ戦直後、選手らは「縦に速い攻撃だけでは……」(FW・大迫勇也)、「(監督は)前へ蹴れ、蹴れと言っていたが、そんなに全部蹴れない」(MF・山口蛍)などと記者らに戦術への不満を口にしていた。それを聞いたハリル監督は、「外部への発言はよくない」と怒りを露わにした。

 そんなシーンの直後に要求されたミーティングをハリル監督が拒否したのは、選手の“発言の場”を奪う意味もあったのかもしれない。少なくとも何人かの主力選手はそう受け止めたことだろう。

 この“リエージュの夜闘”が解任への決定打となったと見られているが、主力選手の一部と監督の亀裂は、その前から埋めることができないほど広がっていた。

 端緒を開いたのは、長らく代表の10番を背負ってきた香川真司だった。サッカー協会関係者が明かす。

「昨年10月のニュージーランドとの親善試合後、香川がハリルの部屋に赴いて、戦術転換を直談判したんです。香川は丁寧にパスを繋ぐサッカーを理想としていて、カウンター主体の監督のサッカーと合わなかった。2人の議論はどこまでも平行線で次第にハリルがヒートアップし、怒号がホテルの廊下に響き渡った。そして、香川は11月の欧州遠征に招集されなかった」

 選手の反乱は連鎖していく。日本は12月16日の東アジア選手権の韓国戦で1-4の大敗を喫した。ここで動いたのが複数の主力選手たちだった。協会関係者が続ける。

「韓国戦の結果を受けて、本田圭佑ら選手数人がハリルの戦術に対して意見を出し合ったそうです。“このままじゃW杯で1勝もできずに終わる”といった意見が集まり、それを集約して協会に伝えることになったそうです」

 だが、そんな“直訴状”が実を結んだ形跡はなかった。協会関係者はこんなことを話す。

「田嶋会長が緊急会見で、昨年末の韓国戦後にもハリル監督の解任について『議論を交わした』と説明していますが、この話は選手の耳にも届いていたのではないか」

 その後も、選手とハリル監督の関係は改善されなかった。選手たちにとっては協会が代表監督を制御できていないと映った。その鬱憤が積もっていった末に“リエージュの夜闘”を迎えた。

※週刊ポスト2018年4月27日号

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