「成人年齢引き下げ」論議が象徴する“日本のIQ”の衰え

NEWSポストセブン / 2018年5月3日 16時0分

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成人年齢引き下げは何が問題か

 先日、滋賀県彦根市で19歳の警察官が拳銃で上司を撃ち殺すという事件が起きたが、未成年だからと匿名報道が続いている。18歳選挙権がすでに実施されているのに、19歳で警察官も勤めている容疑者が、杓子定規に少年として匿名にされていることについて議論も起きている。成人年齢の考え方に潜む日本の問題について、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

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 このところ日本という国の行政能力の劣化を象徴するニュースが相次いでいる。財務省の公文書改竄やセクハラ問題しかり、防衛省の自衛隊日報隠蔽問題しかり、文部科学省の前事務次官の授業内容報告要請問題しかりである。

 個々の議論はともかく、本質的な問題は政治家と官僚の総体的な能力低下にほかならない。いわば日本という国家の「集団IQ」が衰え、思考能力がなくなっているのだ。これは実にシリアスな問題である。

 さらに例を挙げれば、3.11からの復興の遅れをはじめ、全く使えないマイナンバー制度、すでに忘れ去られたプレミアムフライデー、税金の無駄遣いでしかない公務員の定年延長、21世紀に対応できない学習指導要領改訂案、失敗が目に見えているIR実施法など、枚挙に暇がない。国だけでなく東京都でも、大騒ぎした東京五輪の競技会場問題や築地市場の豊洲移転問題、人気取りの私立高校無償化など、あまりにもお粗末で失笑を禁じ得ない。

 そして、その最たるものが成人年齢の20歳から18歳への引き下げだ。それを定めた民法改正案が今国会で成立すれば、4年後の2022年4月1日に施行され、明治時代以来続く「大人」の定義を変える大改革となる。だが、なぜ今この改正をすべきなのかという本質的な議論はすっかり抜け落ちたまま、ただ成り行き任せで事が進んでいる。

 そもそもこの議論は第一次安倍晋三政権の2007年に成立した国民投票法で、選挙権年齢の20歳以上から18歳以上への引き下げを定めたことがきっかけである。すでに私は過去に選挙権年齢だけを引き下げる矛盾を批判したが、それから10年以上も経ってようやく成人年齢引き下げの議論が始まったというのは、遅きに失している。しかもこの間、「成人とは何か」という考察は全く深まっておらず、したがって「成人」の定義もなされていない。

 かてて加えて、議論の中身もお粗末極まりない。選挙権年齢が18歳以上ということは、18歳になったら選挙で投票できるだけの「大人」の判断力がある、ということだろう。ところが今回の改正案では、飲酒や喫煙は20歳以上、競馬、競輪、競艇などの公営ギャンブルで馬券、車券、舟券を購入できる年齢も20歳以上のまま据え置かれる。

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