延命治療を望みません──増える「尊厳死宣言」の実効性は

NEWSポストセブン / 2018年10月25日 7時0分

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「尊厳死宣言」申告マニュアル

 日本公証人連合会が、ある調査結果を発表した。今年1~7月に、公証役場で作成された『尊厳死宣言公正証書』(以下、尊厳死宣言)の数が、983件にのぼったという。

 そもそも、公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する文書のことだ。金銭貸借を含む各種契約や、遺言などの内容を公証人が証明することにより、法的な紛争を未然に防ぐことを目的としている。

 そこで作成される尊厳死宣言には一体どんな役割があるのか。優オフィスグループ代表で、行政書士の東優氏が解説する。

「尊厳死宣言は、終末期に延命治療を望まない意思を、公証人の前で宣言する文書です。法的な拘束力はありませんが、家族や医療機関などに対して自分の意思を表明できるものです」

 だが、尊厳死宣言を作成しさえすればすべてが希望通りに進むとは限らない。ポイントは公正証書に法的な拘束力がないことだ。まこと法律事務所の弁護士・北村真一氏は次のように指摘する。

「尊厳死宣言をしていても、本人の意思に反して、家族が延命治療の中止に同意しなければできませんし、医者が拒否する場合もあります。本人、家族、医師の同意が揃って、初めて実現するものです」

 尊厳死宣言の作成にあたっては、家族や主治医と十分に話し合う時間を設けることが望ましい。さらには定期的に尊厳死への気持ちに変化がないことを意思表示し、理解を得る。「死」は自分一人では完結できない現実があるからだ。日本公証人連合会の向井壯氏がいう。

「尊厳死宣言に家族の了承を組み込む場合もありますが、公証人には、本当に了承しているかどうかの確認義務はありません。まさか嘘をつくということはないでしょうが、本人が納得してもらっていると感じていても、家族はそう認識していないこともある」

 前出の北村氏も、本人と家族の考えにズレが生じる場合があると指摘する。

「絶対に回復の見込みがないという状態の場合のみに認められるのが尊厳死です。しかし、家族が“まだ助かるかもしれない”と望みを捨てられないことがある。それこそ機械につないででも生き永らえさせておけば、もしかしたら近い将来画期的な治療法が見つかるかもしれないという希望を抱く人もいます」

 病床にある人の年金額と、治療にかかる医療費との兼ね合いを計算した上で、家族が延命を希望するという耳を疑うようなケースも存在するという。

◆家族と思いがすれ違う

 当初は意思統一が図れていても、いざ死期が近づくと、家族の心境に変化が出てくることもある。

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