東急の司令長「鉄道ファンは鉄道会社就職できない説」を語る

NEWSポストセブン / 2018年12月4日 16時0分

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撮り鉄でもあり模型鉄でもある東急の小川昌幸さん

 全国の鉄道ファンが一度は抱くであろう夢が「鉄道会社に就職すること」。子供の時から鉄道に親しみ、鉄道とともに育ってきたような熱心な鉄道ファンは「鉄道会社に就職しようとしても敬遠される」というのがファンの間では定説だが、東急電鉄に勤める小川昌幸さん(53)は、「撮り鉄」「模型鉄」「部品鉄」「乗り鉄」「飲み鉄」など多くのジャンルの趣味を持つ生粋の鉄道ファンだ。

 現在は運輸司令所の司令長という要職にあり、運行管理の責任者をしている小川さん。天災などで遅れが発生した時に、列車を運休にする、ダイヤを変更するといった判断をしたり、SNSなどで利用者に正確な運行情報を提供するのが主な仕事だが、鉄道趣味が仕事に役立つことがあるという。

「鉄道業界では、他社でも事故が発生すると国土交通省を通じてその情報が共有されます。『○○社の○○という場所でこんな事故がありました。東急でも同様のことが起きないように気をつけてください』ということです。多くの社員は、自分の会社の保安システムはよく理解していますが、他社のことは分からないケースもあります。そんな時に、“乗り鉄”や鉄道模型を通じて他社車両の構造などを知っている私に『説明してほしい』と声がかかるのです」(小川さん・以下同)

 社内でも、小川さんの“鉄分”の濃さは知られているという。そして司令長という立場で、保安のプロフェッショナルでもある。声がかかるのも当然だろう。

 小川さんは鉄道系の高校を卒業したため、同級生は鉄道マンばかり。同級生や趣味を通じて知り合った他社社員との繋がりもあり、飲み会が貴重な情報交換の場になることも。

「もちろん守秘義務に関わることは話しませんが、安全面に関する議論はかなり突っ込んですることもあります。安全は、我々の原則です。だから、どこか他社で事故が起きると、『この間の事故って、何で起きちゃったんだろう』『再発する要因はどこかにないだろうか?』『教育面ではどうか』などと深い議論になりますね」

 幼い頃から鉄道に親しみ、鉄道系の高校から鉄道会社に就職するという、マニアにとっては夢のような人生を歩んできた小川さん。“中の人”の立場から見ると、よく言われる「鉄道ファンは鉄道会社に入れない」という噂についてどのように思うのか?

「そういう話があるのは知っていますが、『鉄道ファンだから鉄道マンになれない』ということはありませんので、好きな人にはぜひチャレンジして欲しいですね。むしろ『鉄道が好き』という人と一緒に働きたいと思います。

 東急は、例えばホームドアの設置にはかなり積極的に取り組んでいますし、安全に関わる技術も日々、進化させています。もちろん設備や技術も大事ですが、それを支えるのは『人』です。安全を守るためにもお客様に快適に乗車していただくためにも、鉄道が好きだからこそ出てくるアイデアがあるし、生まれる人脈もある。そのために、鉄道はもちろん、いろんな分野に視野を広げてもらいたいですね」

 趣味として、鉄道写真・模型・乗り歩きなどを楽しみつつ、仕事では駅員、車掌、運転士、助役、駅長、そして司令長を経験した小川さんのことを、奥さんは「好きなことでお給料がもらえて、本当に幸せよね」と言っているそうだ。

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