最先端の脳腫瘍手術 医師と患者が会話しながら手術を進行

NEWSポストセブン / 2012年2月12日 16時0分

 ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などにも取り組んでいる。鎌田さんは最近、最先端の脳腫瘍手術の現場を見て、大変驚いたそうだ。
 
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 驚きの世界だ。脳外科医が患者さんと会話をしながら、脳腫瘍の切除をする光景が広がっていた。コメンテーターとして出演している日本テレビ『news every.』の「鎌田實の“がんばらないコーナー”」で、スタッフが東京女子医科大学脳神経外科の手術室を取材した。そのVTRを見て仰天したのだ。
 
 先端生命医科学研究所先端工学外科学の教授、村垣善浩さんは、脳神経外科の教授も兼任している。東京女子医大は早稲田大学と連携し、さらに日立メディコという企業らと産学協同で、最先端の手術システムを開発してきた。

 手術室の入り口には「インテリジェント手術室」の文字があった。聞き慣れない「情報誘導手術」というものが行なわれている。天井や壁には20台以上ものカメラが付いていて、大型のモニターもたくさん置かれていた。

 手術が始まった。執刀する丸山隆志講師は、患者さんに名前を告げてもらっている。そして「この絵はなんですか」とたずね、「バラです」といった話を交わしているのである。その後も執刀医が電気メスで脳の悪い部分を切除すると「順調ですよ」と声をかける。

 読者の方々は、どうしてこんなことができるのかと思うのではないだろうか。体や心の痛みを感じるのは脳である。しかし、脳細胞自体は、痛みを感じないのだ。まさにコロンブスの卵――。
 
 もちろん頭皮を切り、頭の骨を外すときは、痛みを止めなければならない。だが、いったんそれを終え、脳腫瘍を切除する段階になれば、患者さんは痛みを感じないから、意識があっても、手術ができるのだ。

 僕がいちばんすごいと思うのは、この手術では、患者さんの自己決定権が守られているということだ。これまでは、麻酔をかけられていたため、手術中に自身での判断ができなかった。

 リスクが大きな手術の場合、手術中に患者さんの家族を手術室に呼んで「万が一、手足が動かなくなるかもしれません」と伝える一方で、できるだけ腫瘍を取りきるのか、無理をしないのかを、家族の判断に委ねてきた。

 しかしこの手術なら、患者さん自身に直接確認をとれるのである。それぞれの人生観で「無理をしないで」という人もいれば、「できるだけ取りきってほしい」という人もいる。ぎりぎりのところで命の判断を自分でできるのは、素晴らしいことだ。患者さんが自分で納得している分、たとえ軽いマヒが残ったとしても、リハビリにも積極的に取り組めるはずだ。

※週刊ポスト2012年2月17日号



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