AI検査を取材… 52歳記者、食道がん発見・手術・退院まで

NEWSポストセブン / 2019年2月19日 7時0分

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AI診断の結果を聞く筆者

 本誌・週刊ポスト(1月1日・4日号)で特集した「緊急体験ルポ いよいよ始まったAI(人工知能)医療診断」では、がんを高確率で見つけ出す「AI内視鏡画像診断支援システム」(千葉県我孫子市・東葛辻仲病院)を紹介した。実は、この診断を体験取材した本誌記者(52)は、それをきっかけに「初期の食道がん」と診断されていた。発見から治療までどのような流れだったのかを本誌記者が報告する。

 * * *
 私が東葛辻仲病院を取材のため訪れたのは、昨年12月半ばのことだった。この病院では、2018年5月から「AI内視鏡画像診断支援システム」を導入した。1万2000枚以上の胃がんの内視鏡画像に、内視鏡医が病変の範囲をマーキング。そのデータを独自のディープラーニング・システムでAIに学習させたという。

 50代になり、老いには抗えないと感じるが、この歳まで大病もなく、毎年の健康診断でも異状は見当たらなかった。だから、「AI診断を体験してください」という編集部の依頼にも「結果は『異常なし』だろうから、記事が面白くならないのでは……」と心配していたほどだ。

 ところが、内視鏡カメラによる検査を体験した後、医師から聞かされた言葉は想定外のものだった。

「胃より食道に問題があります。炎症で膨れているところがある。組織検査をして、悪性かを判別します」

 検査結果を見ると、AIは確かに私の病変を“異常箇所”としてマーキングしていた。だがこの時はまだ、「たいしたことはないだろう」と高を括っていた。しかし数日後、取材でお世話になった病院の広報担当者から連絡が入った。

「担当医師から、ご本人と直接話したいと。できるだけ早く病院に来てください」

◆もし人間の医師だったら……

 不安な気持ちで再び訪れた病院の診察室。1対1で向き合った医師が言った。

「病理検査の結果、がんが見つかりました」

 初期の食道がんで、大きさは直径1cmほど。覚悟はしていたが、ショックだった。だが、内視鏡手術で完治する可能性が高いと言われて、少しだけ落ち着くことができた。

 そういえば、夏頃から時折、白米を食べると胸がつかえる感じがしていた。あとで調べると食道がんの初期症状のひとつだった。

 再検査、手術は専門病院であるA病院で行なうことに決めた。東葛辻仲病院と同一のAI画像診断の試験をしているので、検査情報がスムーズに移されることを期待した。

 1月15日に入院し、翌日には手術。事態は急テンポで進んでいった。手術は無事終わり、1月下旬に退院した。最終的な検査で「転移は100%ない」と診断され、ほっと胸を撫で下ろした。今後は定期的な内視鏡検査で、再発がないかチェックすることになる。

「AI診断のおかげで命拾いした」とまで言えるかどうかはわからない。AIでなくとも熟練した医師であれば発見できるものだったとも告げられた。

 しかし、人間にはどうしても“ミス”がある。未熟な医師が画像診断を担当したり、あるいは医師のコンディションによってがんが見逃されていた可能性はゼロではない。それを考えれば、精度の高い診断に救われたのかもしれない。

 いまのところ医師をアシストするのがAIの役割というが、今後、担う領域は飛躍的に広がるだろう。医療の進歩を実感した貴重な体験だった。

●文/橋本安彦(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2019年3月1日号

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