国内100万人も 『吃音』著者が語る当事者の苦しみ

NEWSポストセブン / 2019年2月28日 7時0分

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『吃音 伝えられないもどかしさ』の著者・近藤雄生氏

【著者に訊け】近藤雄生氏/『吃音 伝えられないもどかしさ』/1500円+税/新潮社

 幼児の吃音は20人に1人の割合で発生し、消えずに残るケースが人口の約1%。この数字はほぼ世界共通で、日本には今も100万人近い吃音者がいる計算になる。

『吃音 伝えられないもどかしさ』の著者・近藤雄生氏自身、宇宙飛行士や物理学者の夢を吃音ゆえに諦めた当事者。東大大学院修了後、就職を断念し、世界中を旅しながら物を書く道を模索した彼は、中国滞在中、〈一杯珈琲〉とどもらずに言えた日を境に症状が改善。今では片鱗すら窺えないが、言いにくい音は他の言葉に言い換えるなど、人知れず努力を重ねてもきたという。

 大杉栄やマリリン・モンロー、田中角栄などなど、吃音を抱えて活躍する人は数多い。が、社会生活への不安や恐怖から死の誘惑に駆られる者も少なくなく、本書はそんな1人、高橋啓太氏の物語から幕を開ける。

〈高橋啓太は、物心がついたころから思うように話すことができなかった〉〈「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ……」とどもって話すと、同級生みなが笑った〉〈高橋はそのとき初めて実感した。どもるのは恥ずかしいことなのだ、と〉

 吃音には主に「ぼ、ぼ」と同じ音を繰り返す〈連発〉、「ぼーく」と伸ばす〈伸発〉、「……(ぼ)くは」と頭の音が出ない〈難発〉の3つがあり、連発→伸発→難発と症状が進行しがちだという。高橋の症状も年々悪化し、高校も2年で中退。一度は人生を生きる意味を見失いかけた。3歳の娘の父親となった彼と著者が出会うより、18年前のことだ。

「僕は2003年に旅に出る前、やはり吃音に関する記事を書いたことがあります。当時旅に暮らし、物を書くことで生きる道を模索していた僕にとって、それが初めて雑誌に載った文章でした。

 そして2008年に帰国して、再度このテーマに取り組み始めた2013年の6月、NHK『バリバラ』の収録現場で高橋さんと出会った。彼は当時、僕も吃音でしたとは言えないほどどもっていて、なのに娘さんに話すときは平気だったり、症状にブレがあるのも吃音の難しさなんです。

 僕自身は死のうとまでは思わなかったけれど、そのひと月後には札幌の新人看護師の男性が吃音を苦に亡くなられたこともあり、自分がテレビに出ることで吃音に悩む人の力になれればと言う高橋さんのことをもっと知りたいと思った。

 実は彼はこの出演を機に名古屋で相談室を開く言語聴覚士・羽佐田竜二さんと再会し、治療に再挑戦するのですが、本書はそれから5年間の彼の変化を追った人生の記録でもあります」

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