胃がん治療 開腹手術せずに食事が楽しめるLECSとは?

NEWSポストセブン / 2019年3月4日 16時0分

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「手術を受けない」という選択肢も

 日本人の死因第1位であるがん。これまで長く、「見つけたら切る」が治療の常識だった。外科手術でがんをすべて切除すれば再発の可能性が減るという前提に立ち、「早期発見、早期切除」が大目標とされてきた。

 だが近年、その常識が変わってきている。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。

「体にメスを入れる手術は当然ながら、患者への負担が大きい。大腸がんなら人工肛門になる、胃がんなら食事が難しくなるなど、術後の生活に大きな支障をきたすデメリットもある。かつては他に選択肢がありませんでしたが、医療の進歩により、がんの部位やステージによっては手術以外を選んだほうがいいと判断する専門家も増えてきています」

 とりわけ歳を重ねるほどに「手術を受けない」という選択は有力になってくる。

 日本人男性に最も多い胃がんは、胃の一部、または全部を切除する手術が標準的な治療法だ。ただし、歳をとってからの発見であれば、話は少し変わってくる。

「私の胃にがんが見つかったとして、80歳を超えていたら全摘手術は受けません」とするのは、北里大学病院一般・消化器外科の比企直樹医師(56)だ。

「近年は高齢の患者への胃がん手術が増えていますが、80歳を超えてから全摘手術を受けると、術前の5~6割程度まで食事量が減り、体力や筋力が激しく落ちます。

 仮に手術で胃がんが切除できても、身体が衰弱して痩せ細ると、他の病気で死亡するリスクが増える心配もある。しかも術後は、ご飯をおいしく食べるという人間の根源的な喜びが奪われて、気力を失ってしまうケースが目立ちます」(比企医師)

 ただ、ステージIで胃がん手術を受けた患者の5年生存率は96.7%(全国がんセンター協議会、2018年)。早期発見なら手術が最有力になりそうに感じられるが、必ずしもそうではない。この生存率はあくまで全年代での数字だ。

 比企医師がステージIの胃がんを手術で摘出した85歳以上の患者77人について調査したところ、5年生存率は約60%だった。

「見つかった年齢によっては手術は受けない」とする比企医師が早期胃がんへの“別の選択肢”とするのが「LECS(腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除)」だ。

「口から入れた内視鏡と、お腹に開けた孔から差し込んだ腹腔鏡を用いて、胃の内と外から局所的に腫瘍を取り除く治療法です。全摘手術と比べて切除範囲や体への負担が少なく食事制限も必要ないため、術後の退院が早く生活の質も維持できます」(比企医師)

※週刊ポスト2019年3月15日号

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